Twitter Line Facebook Share
PLAYLIST

出かける準備をしながら聴きたい究極のプレイリスト

2024年3月 
Words and playlist by Scarlett O’Malley

ナイトアウトに出かける準備は十代で誰もが経験する通過儀礼ですが、そのルーティーンは大人になるにつれて変わっていきます。ファッションのトレンドから、部屋をシェアしていた頃の身支度、夜遊び前の仮眠の習慣まで、私自身の準備のルーティーンが年齢とともにどう変わってきたかを紹介します。出かけるバスに乗る前に自分の部屋でかけて踊っていた曲もプレイリストにまとめてみました。

18歳(ぐらい)

夜遊びをするようになったのは、14~15歳の頃です。私にとって、クラブ通いは避けられない運命だったのだと思います。当時の出かける準備は簡単でした。準備のルーティーンとは無縁だったと言ってもいいぐらいです。15歳の頃はSNSがなかった(チークやハイライトの入れ方を教えてくれるメイクのインフルエンサーもいなかった)ですし、スキンケアといえば洗面所のタオルで前の夜のメイクを落とすことだった80年代を過ごした親に育てられたからです。クラブ通いを始めた頃はインディーズレイブの全盛期で、マキシモ・パークやザ・スミスやハドーケン!の曲をiPodのスピーカーで流し、床に座って髪を逆立て、キラキラしたアイシャドウを塗っていました。ネオンカラーのような鮮やかな色を取り入れたインディースリーズのスタイルにレギンスを合わせて、リッチモンドの煙を窓の外に吐き出しながら。パブに行く時も、大人っぽく見えるようにヒールを履いていました。今思えば15歳にしか見えなかったと思いますが……。田舎のパブに集まる十代前半の若者たちの間で絶対的な人気を誇っていたのが、オールドスクールガラージやUKファンクでした。今でもDJラック&MCニートの曲を聴くと、他にはない懐かしさを感じます。ピート・ドハーティやケイト・モスの言動は「インフルエンサー」という言葉が生まれるずっと前から影響力があり、ちょっとルーズなファッションが流行していました。洗っていない髪の逆毛を高く立ててエイミー・ワインハウスのまねをしたり、バレエシューズやスキニージーンズを履いたりするのもはやっていました。そしてもちろん、着古したフレッドペリーも欠かせないアイテムでした。



大学時代

大学生になると、ナイトアウトの準備が一変しました。集団心理に陥る年代ですね。1LDKの部屋に30人以上で集まって、ビアポンなどのお酒を飲むゲームをしていました。団地暮らしだった私が、自分が中産階級であることをはっきり自覚したのがこの頃です。ちぐはぐな家具にもたれかかる人たち。アメリカンアパレルのまったく同じディスコパンツにホルターネックと汚れたコンバースを合わせた少女たち。個性など不要で、女子大生の誰もが同じ格好をして、シュシュで髪をまとめていました。2012年から2013年に人気を博していた音楽はディープハウスでした。あまり言わない方がいいかもしれませんが、実はディスクロージャーの「White Noise」のイントロを聴くと今でも鳥肌が立ちます。Ministry of SoundのディープハウスのCDがお気に入りで、友達とタクシーを相乗りしてもっとディープなハウスが流れるクラブに出かける前に、生ぬるい缶ビールを飲みながらテンションを上げるBGMにしていました。大学時代は、出かける準備をしながら飲むお酒はナイトアウトそのものと同じくらい重要で、結局出かけずに終わることも半分くらいありました。

20代前半

この頃は本物のレイブを求めていた時代で、イビサに行った人が尊敬を集めていました。私はシャッフルダンスが好きだったわけではありませんが、ダンスミュージックにはもちろんハマっていました。大学時代と似たような狭苦しい暮らしでしたが、生活環境はもっとひどかったです。大人4人が一部屋に同居しているのを想像してみてください。二段ベッドで寝て、10時間続くレイブに行く前には準備をしながら鏡を奪い合っていました。イビサに住めたらとみんなが思っていたはずです。Instagramでインフルエンサーが誕生したのはこの頃で、2016年には盛りまくったバースデーメイクが流行しました。恥ずかしながら、私の眉はひどかったです……。トレンドに流されて、眉をそり落とし、できる限り角度をつけて弓なり眉をくっきり描いていましたから。この頃の音楽はというと、シェアしていた部屋で出かける準備をする時にかけていたのも、クラブに向かいながら聴いていたのも、パーティ前のBGMセットを100%歩合で売っていた時にビーチで流れていたのも、すべてハウスでした。今でも朝っぱらから、テンスネイクの「Coma Cat」が頭から離れないことがあります。家では、新しい過ごし方として昼間にレイブを楽しむようになり、11時になるとおなかに何かを入れるためだけにインスタントのボロネーゼスパゲティを食べていました。この頃に誕生して定着したのが、スリに遭わないように、よくあるウエストバッグを胸の前で斜め掛けにするスタイルです。20代のナイトアウトでは、まだやんちゃさがあったものの、準備で手を抜くことはありませんでした。

30代以降

30歳になったばかりですが、出かける準備の要領の良さは一進一退といったところです。スキンケアやメイクのルーティーンが大幅に増えました。しっかりと作り込みつつナチュラルに見えるメイクがトレンドなのはありがたいですね。悲しいのは、夜遊びの前の仮眠が必須になったことです。仮眠しないという人がいたら、うそをついているか9時過ぎに出かけることがなくなったかのどちらかでしょう。夜遊び前の仮眠は浸透しているようです。最近では、出かける準備を一人ですることが多くなりました。「何着てく?」というメッセージが来るとなんだかイラっとします。もう30代なんだから、好きなものを着ればいいでしょ。快適さはおしゃれさと同じくらい重要です。1月にピンヒールを履いて氷の上の小鹿のように四苦八苦しながら、身分証を見せないと入れない最寄りのパブまでバスを3つも乗り継いで行っていたのは、もう昔の話になりました。今となっては、ドレッサーの前に座ってする身支度、コースターに置いたお酒(氷入り)、メイク前の洗顔と保湿が欠かせません。それらは考え抜いた末にたどり着いたプロセスです。30代にはなりましたが、私はいまだにオールナイトのレアソウルやレイブに出かけて朝6時まで遊んでいます。ナイトアウトの準備をしながら、気分を上げるためにスティーヴィー・ワンダーなどのお気に入りのレコードを選んでかける人もいるでしょう。私はもう特定のお店やジャンルにこだわっていませんが、クラブで過ごす時間はこれまでよりも長くなりました。DJをする時には、ソウルやハウスなど、自分が踊れる曲をかけています。いずれにせよ、昔は夕食に炭水化物をたっぷり食べて、メイクが崩れないようにメイクキープミストを使っていたことや、今は踊りやすいトレーナーを着ていることは、これまでの15年間が出かける準備における要・不要の判断に役立っていることを物語っています。