今回は、イギリスの多様かつクリエイティブな若い世代を代表するアーティストたちに集結してもらった。実に待ったかいがあったラインナップだ。 この毎年恒例のイベントは今年で4回目となり、9月15~17日の3夜にわたって開催される。今回は、エノラ・ゲイ、PVA、Grandmas House、RADA、The Umlautsをはじめとして、多くのバンドがライブパフォーマンスを披露する。 これまで出演してきた、ブラック・カントリー・ニュー・ロード、スクイッド、テイラー・スカイは、いずれも革新的な音楽を聴かせてくれた。ワーキング・メンズ・クラブとジョックストラップが出演した2020年のオンラインイベントは、今でもこちらから視聴できる。 また100 Clubの地下に戻れるのが今から待ち遠しい。あの会場でお会いしよう。
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ラインナップ 9月15日(水) エノラ・ゲイ Grandmas House オートモーション Regressive Left Honeyglaze エノラ・ゲイとスティーブ・ラマックによるDJセットリスト
9月16日(木) ナヤナ・アイズ BXKS RADA TaliaBle Nia Archives Nige & Mac WethaとProvisional Licence(Louis Culture / Pullen / Dellon)によるDJセットリスト + MC
9月17日(金) PVA Mount Palomar Paddywak POiSON ANNA The Umlauts Slowdance / Mount Palomar / Lynks / Harry GayによるDJセットリスト





9月15日(水)
エノラ・ゲイ ベルファスト出身のアイリッシュノイズパンクバンドであるエノラ・ゲイは、ボーカルのフィオン・ライリーとギターのジョー・マクベイのジャムセッションを経て2019年後期に結成され、リバーブに満ちたポストパンクサウンドが瞬く間に話題となった。この4ピースバンドによる崩れ落ちるようなサウンドは、アイドルズやキング・クルールなどの不協和音に満ちていたバンドを想起させる。社会的な内容の歌詞や、有害なラッドカルチャーを蔑視する姿勢は、特にアイドルズに共通している。今年に入ってセカンドシングル「Sofa Surfing」をリリースする頃には、スティーブ・ラマックからRadio 1のジャック・サンダースまでもが、エノラ・ゲイこそ現在最もエキサイティングな新進バンドであると称賛するに至っていた。2019年末に最初のライブを開催して以来、数えるほどしかパフォーマンスの機会がなかったにもかかわらず、SXSW、アイルランド・ミュージック・ウィーク、ユーロソニック(ESNS)など、業界で大きな注目を集めるイベントにすでに出演を果たしている。
Grandmas House この数十年、ドラムンベース、トリップホップ、ダブステップといったエレクトロニックミュージックの発祥の地としてたたえられてきたブリストル。そこから近年ひそかに、妥協のない騒々しいポストパンクバンドのシーンが生まれている。そうしたシーンから次に台頭するビッグネームとなりそうなのがGrandmas Houseだ。 ギター兼ボーカルのヤスミン・バーント、ドラムス兼ボーカルのポッピー・ドジソン、ベースのゾーイ・ジンスマイスターから成るこの3ピースバンドは、2018年後期に結成し、じめついたリフ、サーフギターのメロディ、決然たるハスキーな叫び声でその名を知られるようになった。The Louisiana、Rough Trade、Exchangeといったライブハウスで経験を積み、ステフ・チュラ、フランキー・コスモス、リタ・リンチなどと共演してきた。この1年半にシングルを数枚リリースして高い評価を得ると、ザ・レインコーツ、モーターヘッド、コートニー・バーネット、ザ・スリッツと比較されるようになり、イギリスで今最もエキサイティングな新星ライブバンドとしての地位を確立している。
オートモーション 断崖絶壁の頂上から、破片が入った目で、迫りくる5Gネットワークの風景を見下ろせば、人生はより厄介になる。見られていると分かっているからだ。 自動的な動作と、それに続く動きの融合から生じる強烈な体験。それがオートモーションだ。
Regressive Left 2020年の年末にロックダウンをきっかけとして結成されたRegressive Leftは、その政治的主張をはっきりと掲げている。ロンドンを拠点とするこの3ピースバンドは、EMBの循環的なリズムからロンドンのジャズシーンの自由さと表現に至るまで多様な影響を受け、現代的なアートロッカーであるスクイッドや、トーキング・ヘッズ、ディーヴォ、ホット・チップといったポストパンクの大物たちなど、さまざまなアーティストと比較されてきた。Apple Musicでマット・ウィルキンソンに「最も重要な新人バンド」と評価され、トレンドセッターのジャガーやジャムズ・スーパーノヴァの支持を得ているほか、『Clash』誌や『DIY』誌で称賛を浴びている。
Honeyglaze サウスロンドンを拠点とする3人組のHoneyglazeは、ロンドンのロックシーンをバックグラウンドとし、この5年でひそかに支持を集めてきたロンドンのジャズシーンから大いにインスピレーションを得ている。ブロードキャストとケイト・ル・ボンを「音楽面での育ての親」と呼ぶ彼らは、60年代のソウルと90年代のドリームポップが自分たちのサウンドの重要な基準になっていると言い、トーキング・ヘッズの「This Must Be the Place」を完璧な曲として挙げている。まだ比較的ニューカマーのバンドだが、その魅力的なライブパフォーマンスによって高い評価を得ている。





9月16日(木)
ナヤナ・アイズ ロンドン出身のナヤナ・アイズは、成長の過程で触れたさまざまな音楽ジャンルと彼女が思い焦がれるふるさとのサウンドを融合させた唯一無二の音楽性により、あらゆる方面で称賛を浴びている。 ノースロンドンのアーティスティックな家庭で育ち、幼い頃から自然に音楽に接してきた彼女は、バンド(ボーカルとキーボードを担当)でジャズ、ポップス、インディーミュージックの制作を始め、その後、偶然出会ったヒップポップに、インドのソウルを融合させるようになった。 最も影響を受けた人物としてはMFドゥームを挙げている。2020年から2021年にかけて一連のシングルをリリースすると、ジャムズ・スーパーノヴァやRadio 1のシアン・エレリに支持された。「A COLORS SHOW」では「Partner in Crime」のパフォーマンスを披露している。 過去のオール・アワ・トゥモローズ出演者の一人であり、ラヴァ・ラ・ルーやビーグ・ピーグのほかロンドンを拠点とするクリエイターたちが参加する影響力の高いネットワークであるNiNE8コレクティブの一員でもある。また、NTS、Balamii、ReprezentといったラジオでもNiNE8コレクティブのメンバーとして番組を担当しており、Boiler Roomにも出演している。
BXKS ノーザンプトンを拠点とするラッパーであるBXKSは、長期的な視野に立って人生を歩んでいる。2018年にUKラップとグライムのプラットフォームであるMixtape Madnessに登場した彼女は、そのフリースタイルにより、スケプタが称賛のツイートをするほどの熱狂を生み出した。しかし、彼女はそうした盛り上がりにすぐさま乗じることなく、一歩引いて、自分がどのようなミュージシャンになりたいのかを理解しようとした。 やみくもに成功を求めることなく、24歳になった彼女は(ルートンで、父親がレゲエを録音するスタジオを裏庭に建てるような両親の下で育った)、ロンドン交通局で働きながら、ライブに通い、スケプタやノヴェリストの楽曲を貪欲に吸収してきた。 理想とするアーティスト像がより明確になると、2020年の初めにプロデューサーのTKと共に、後に『Full Time Daydreamer』と題されるミックステープの制作に取り組んだ。今年リリースされたこのアルバムは、ダウンテンポのソウルフルな曲が並び、時々トリップしてしまいそうなビートに乗せて、カリスマ性を感じさせる軽快なフローを打ち出し、彼女の音楽が息づく現実逃避的で夢のような世界観を作り上げている。
RADA ロンドン育ちのRADAは、21年の人生で非常に多くの経験を積み重ねてきた。11歳までロシアで育った彼女は、ロンドンに移住して以来、はっきりしないR&Bとソフトトラップの間を行ったり来たりするサウンドと向き合ってきた。2020年にリリースした「Burn One」がSpotifyですでに50万回近い再生数に達する中、RADAは、自身の音楽プロジェクトのクリエイティブディレクターを務めるほか、モデルとしても活動している。ジャマイカをルーツとする彼女は、音楽とビジュアルを通じて、自身が受けた幅広く深い影響を表現している。ジャンルにとらわれないコレクティブである237のメンバーであり、このコレクティブと同様に一つの枠に収まらないアーティストである。
TaliaBle トッテナム出身でロンドンを拠点とする新進気鋭のラッパーTaliaBleの音楽は、シュルレアリスムと調子外れのビートを楽しんでいる。大きな影響を受けた人物としてサルバドール・ダリとドクター・スースという予想外の2人を挙げ、自らの音楽を「機能不全のラップオペラ」と表現する。彼女が音楽と真剣に向き合い始めたのはごく最近のことで、最初の失恋がきっかけだった。当時UKラップのプラットフォームKeep Hushでインターンをしていた彼女は、現在プロデューサーを務めるカール・ビナージに何かをレコーディングしたいと伝えると、すぐに音楽的な関係が構築された。すでにLate at Tateでのパフォーマンスで大きな注目を集めており、2021年は目が離せなさそうだ。
Nia Archives 21歳のNia Archivesは、現在隆盛を極めるイギリスのジャングルシーンから現れた、最も期待される新星の一人。ロンドン出身のプロデューサー兼シンガーソングライターで、ジャングルのリズムをネオソウル的な甘い声に合わせ、2020年の曲「Sober Feels」で広く注目を集めた。女性がジャングルやドラムンベースのスキルアップを図れるよう支援する、DJ FlightによるメンターシップスキームEQ50でチャンスをつかんだ。それが、Redlight、Jakwob、Congo Nattyとのコラボレーションへとつながり、ついにUKベースミュージックのオンランプラットフォームでありレーベルでもあるUKFからデビューEP『Headz Gone West』をリリースするに至った。





9月17日(金)
PVA PVAは、エラ・ハリス、ジョシュ・バクスター、ルイス・サッチェルというロンドンのミュージシャンによる、ジャンルを越えた意欲的なプロジェクトで、2年前にハウスパーティの喧騒の中で結成された。熱狂的なライブのセットリストでは、テクノ、バレアリックユーフォリア、毒気に満ちたインダストリアルを取り入れ、同じ曲の中でさえ多数のジャンルを行き来する。バンドのユニークなエネルギーによって、重厚なシンセサイザー、淡々としたボーカル、動的なドラムループが組み合わさっており、ロンドンで最も進歩的な新星バンドの一つとなっている。
Mount Palomar ベルファストを拠点とするニール・カーは、その騒々しいパンキッシュなテクノで、ジャイアント・スワンやマルセル・デットマンと比較されている。彼は2018年にMount Palomar名義で、同じく北アイルランドのDJであるOr:laと共に初のライブを行うと、そのわずか数日後に、ベルリンテクノのメッカとされるBerghainでのプレイに招かれた。Berghainで開かれたプライドのパーティのメインフロアでピークタイムにプレイしたのを含め、1年間で4回のライブを行い、ロンドンのPrintworksやベルファストのAVAフェスティバルといった大規模な会場でもパフォーマンスを披露するようになった。AVAフェスティバルでのプレイは収録され、Boiler Roomで配信された。2020年のコロナ禍によって、彼のライブエレクトロニックアクトの台頭はスローダウンしたものの、エノラ・ゲイなどのリミックス楽曲や、自身のアルバム『The Perils Of Youth』が幅広いファンを獲得し、知名度が高まり続けている。
Paddywak ブリクストンにあるザ・ウィンドミル(ミートラッフルやPVAといったアーティストが初期にライブを行っていたことで知られる会場)のオーナーであるティム・ペリーは、Paddywakの音楽を、「この上なくポップな間奏を挟んだ、優れたノイズの壁」と形容している。これは妥当な評価といえるだろう。ロンドンを拠点とするこの3人組(ベルファスト出身のケイトリン・パワー、ローマ出身のオラツィオ・アルジェンテロ、バーナム出身のレオ)は、ブラック・ミディとの共演を経験している。そのひずんだフィードバック、サイケデリックなメロディ、断固たる力強い叫びのパワフルなコンビネーションが、ロンドンのレーベルDouble Dareの耳に留まり、デビューEP『Spacey Daisy』が昨年リリースされた。
POiSON ANNA 中毒性のある、ダブ、トリップホップ、UKラップのユニークな組み合わせを、バランス良く個性的に表現するPOiSON ANNA。最近の新人アーティストの中で最も並外れた個性を持つイギリス人ボーカリストだ。イギリスとチェコにルーツを持つ23歳の彼女は、権力の乱用やフェイクニュースの拡散といった社会のネガティブな風潮に対する思いを反映したデビューアルバム『EXCELSiA』を今年6月にリリースした。その制作は、突き詰めて言えば、崩壊して誤った方向へと進む社会の中で、自己を見いだし、内省し、真実を追求するという、ごくパーソナルな過程を瞑想したものである。このアルバムは、彼女がいつもコラボレーションしているMobbと共に制作され、メアリー・アン・ホッブスやベンジー・Bらからの支持を得た。彼女の音楽はGTA Vでも使用されているほか、これまでにエイサップ・ロッキーやディーン・ブラントといった先見性のあるアーティストともコラボレーションを果たしている。
The Umlauts
RADA ロンドンの4ピースバンドThe Umlautsのルーツは、作曲担当のアルフレッド・リアとオリバー・オフォードが育った、グロスターシャーのストラウドにある。彼らは、シンセサイザーの世界を探求できる避難所としてストラウドのStroud Valley Artspace(SVA)を利用し、そこで曲作りの日々を過ごしながら、ビョーク、ザ・フォール、ザ・ナイフなどのさまざまな音楽から影響を受けてきた。しかし、バンドの結成に至ったのは、ロンドンのアートカレッジで、作詞とボーカルを担当するアナベル・メドリンガーとマリア・ヴィットリア・ファルディーニが加わってからのことだった。デビューEP『U』は、メカニカルなシンセポップ、とがったノーウェーブ、激しいポストパンクを緻密に織り交ぜている。 地理的なバックグラウンドも前面に押し出されており、2人のボーカルは母語で歌っている。メドリンガーはオーストリアアルプス出身で、ファルディーニはモナコで生まれ育った。そんなThe Umlautsだからこそ、結成当初には、国境を越えたコミュニケーションと、何を伝えられるかに最も興味を抱いていた。 EUを離脱したイギリスで結成され活動していることは、汎ヨーロッパ的なグループとして目をそらせない事実だが、それを通じて彼らは探し求めていた答えを見いだすことができた。The Umlautsは、文化の融合と国境を越えた視点がもたらし得るメリットを思い出させてくれる、素晴らしくユニークなバンドである。