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サブカルチャー

Spotlight on: Tricot



Words by Ben Perdue

快適で耐久性があり、常にシャープな印象のトラックスーツに使われている、クラシックなスポーツトリコ素材。

トリコ素材は脇役から主役へと昇華しました。スポーツウェアとしての役割は、70年代のコートサイドでのデビュー以来、基本的に変わっていないものの、今ではスポーツ以外の場面で多く着用されるように。アイコニックなテーピングが施され、張りのあるトリコ素材のトラックジャケットは、カジュアルファッションはもちろんのこと、カジュアルではないコーディネートでも定番のアイテムとなりました。今では、試合前よりもアフターパーティで着られることが増えました。フレッドペリーのアーカイブに収められたこのクラシックアイテムは、トレンドに左右されたラグジュアリーブランドのコピー商品が登場しては消えていく中で、今もなお愛され続けています。

コットンとポリエステルの混紡糸を縦編みにすることで快適性と耐久性を両立させたトリコ素材は、テニスの試合の行き帰りに着用するトレーニングウェアとして必要な要素をすべて備えています。しかしその光沢とシャープさ、さらにヴィンテージのスポーツウェア特有のスリムなフィット感とクリーンなラインといった要素により、クラブファッションやストリートウェアとしての人気も高まりました。時代を超えて受け継がれるレトロな魅力が着想源となり、さまざまなテイストとミックスされ、私たちのサブカルチャーのユニフォームとなったのです。

70年代のアンダーグラウンドダンスホール・シーンで人気が広がり始めたトリコ素材のトラックスーツの成功は、その汎用性の高さによるものです。というのは、デイリーウェアとしてもクラブファッションとしても完璧だからです。70年代にはThe Clashやノッティングヒルのカーニバルのウェストロンドンの若者たちのユニフォームであり、(過去の時代のトレンドを巧みに取り入れた)90年代のストリートウェアの定番アイテム。シンプルなトリコ素材はどの時代にも適用し、つねに多様なオーディエンスを魅了してきました。サブカルチャーに欠かせないワードローブとして、トリコ素材は時代から時代へと旅をしてきました。それはディスコ、ジャズファンク、アシッドジャズ、アシッドハウスへと拡大していった南部のソウルボーイ・シーンのように、洗練され、広く受け入れられるようになったのです。