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サブカルチャー

コレクターズ



Words by Lisa Der Weduwe
Photos courtesy of the Museum of Youth Culture

レアなウェアからレイヴのフライヤーまで、熱心な3人のコレクターに話を聞きました。

人間は、「私はここにいた」ということを世界に示すために、いつの時代も自分の足跡を残してきました。若い頃は、お気に入りのジャケットにつけた音楽への忠誠を示すピンバッジや、自分の部屋の壁にコラージュしているレイヴ会場から持ち帰ったシワだらけのポスターなどがこうした思い出の品。このような青春の欠片は、最高に楽しかった夜、笑い話、そして人生を変える瞬間を物理的に表現してくれるのです。

Paul McCourt

長期的に保存されることを意図していない印刷物を「エフェメラ」と呼びますが、コピー機で作ったペラペラのフライヤーやツアーバンドのTシャツなど、若かりし日の思い出の品がまさにそれ。私たちはそれらを何年も大切に持ち続けています。靴箱に保管し、ときどき友人と過去を懐かしんだり、家族に見せたりするのです。時間が経つにつれ、涙や汚れも歴史の欠片となります。その当時は手に入れることができなかった人も、今ではEbayなどで探して高額な値段で購入することもができます。

ミュージアム・オブ・ユースカルチャーでは、収蔵する写真の背景にあるストーリーをよりよく伝えるために、このようなエフェメラの取り扱いを開始しました。写真はその瞬間を切り取るものですが、エフェメラは、当時流行したデザインの特徴、忘れ去られた会場、もう使われていない電話番号など、その時代を色濃く映し出します。

フレッドペリーの「Grown up in Britain」キャンペーンでは、ミュージアムの未来のために、大切なエフェメラを寄贈していただいています。そもそも、人々はどのようにして、思い出を蒐集するようになったのでしょうか? ミュージアム・オブ・ユースカルチャーの3人のコレクターに話を聞きました。

Matt Hulse

Chelsea Berlin:レイヴのフライヤーのコレクター

参加したイベントの思い出を写真として残す人もいますが、私はエフェメラなどの思い出の品を収集しています。イベントの光景や音、視覚的な記憶を鮮明に呼び起こすだけでなく、イベントのグラフィック要素や雰囲気は、フライヤーやポスター、グッズに収められていることがほとんどだからです。このようなイベント関連アイテムは、ひとつひとつが私の心を揺さぶるアートそのもの。

写真は一緒に過ごした人たちとのその瞬間をとらえたものです。でもどのイベントで撮影してもよかったのです。というのも、いつも同じ仲間と一緒にいたから。けれども、特定のイベント、特に一度きりのイベントに関連したエフェメラは、歴史的資料や社会的文脈になるだけでなく、視覚的なトリガーになります。まるでその時間を昨日のことのように思い出すことができ、もう一度その場にいるような気持ちにさせてくれるのです。

外を歩いていて懐かしい匂いがしてくると、一瞬にして過去に連れ戻されるような感覚を覚えます。私のアーカイブにあるコレクションは、そのような「プルースト効果」と同じ感覚を生み出します。フライヤー、ワッペン、バッジ、ポスターなど、収集した資料や記念品を見ると、自分がそこにいたこと、誰と一緒にいたか、どんな時間を過ごしたかという記憶が蘇るのです。

Catherine Laz

Roger Burton:Horse Hospitalのキュレーター兼オーナー

私はいわゆる「マニア」の域に達する収集家だと思います。優れたデザインに対する強い愛情が私をそうさせました。9歳の時に農機具のピンバッジを集めることから始まり、アメリカの珍しいタバコのパッケージとロゴに魅せられるようになったのです。そして10代の頃は、モッズカルチャーに夢中だったため、ファッション誌ばかり読んでいました。

1966年にモッズが終了した後、1930年代から1950年代のヴィンテージのメンズウェアを本格的に収集して着るようになりました。当時はヒッピーファッションが大嫌いだったので、その反動だったのです。それから50年、2万点以上の重要なストリートファッションのアーカイブを持ち、今でもコレクションを続けています。しかし最近では、服だけにとどまらず、音楽、映画、アート、建築、人物など、希少なものを発掘することに関心があります。一般的にほとんど知られていないものを調査する探偵のような仕事が大好きなのです。

Lucy McCarthy
Cathy
Salil Meech Mazumdar

Alice Ridgway:The Rusty Pin主宰

ヴィンテージのバッジを収集する私は、自分が生まれる前のカルチャーシーンを探し求める若い世代のコレクターのひとりです。

現在、昔の音楽関連のグッズの人気が急上昇しています。特に人気が高いのは、カルトバンドのTシャツやレアなコンサートのポスター。これは現代の大量生産や大量消費文化、そしてヒット曲を量産する現代の音楽産業への反発でもあるのでしょう。

オリジナルのパンクのピンバッジは、今から40年以上も前に作られたものです。そのピンパッジをレザージャケットにつけていた最初の持ち主は、その後、おそらくピンを箱にしまって屋根裏で保管していたのでしょう。フリーマーケットでこのような古いピンを見つけて購入するという行為は、そのピンに新たな人生を与えることを意味します。

古いバッジについたシミやサビ。哀愁漂うこの経年変化が、バッジをさらに魅力的にさせてくれるのです。最近のバンドのバッジも集めているので、これから数十年後、未来の持ち主がそれら末永く大切にしてくれることを願っています。