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サブカルチャー

今話題のソウルレーベル三選

2022年9月
Words by Scarlett O’Malley

DJやラジオホストなど多彩に活躍するソウルの第一人者スカーレット・オマリーが、ソウルシーンで今話題のレコードレーベルや、彼女をダンスフロアに向かわせる曲について語ります。

モータウンの名は誰もが知っていますよね。

モータウンと言えば、スティービー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、ザ・テンプテーションズ、ダイアナ・ロス&ザ・シュープリームス。その名は多くの場合、デトロイトに本拠地を置くレーベルというより、一つの音楽カテゴリーの総称として使われています。でも、モータウンが育てたのは、ソウルミュージックという(私の中では)最大の影響力を誇るジャンルの始まりに貢献したアーティストたちの一部にすぎません。

「最大の影響力」というのは、ソウルミュージックからディスコミュージックが生まれ、ディスコミュージックからダンスミュージックが生まれたからです。そしてソウルミュージックは、そうした音楽だけではなく、カルチャーのルーツでもあります。アレサ・フランクリン、エタ・ジェイムズ、ジェームス・ブラウンが音楽に与えた影響がなければいったいどうなっていたでしょうか?ただし、ビッグスターの背後には、必ずその音楽をリリースするレーベルがあることを忘れてはいけません。そうしたレーベルがなかったら、今の音楽シーンはかなり違ったものになっていたでしょう。ですから、新しい音楽はとても大切なのです。

そこで、最新のソウルミュージックをリリースしている音楽レーベルを3つセレクトしました。いずれも、偉大なジャンルを存続させるとともに、その新鮮さを保っているレーベルです。

Bobby Oroza / Big Crown Records

ビッグ・クラウンは、「ソウル」レーベルの枠にはめられることを拒んでいます。私がそれを知っているのは、2019年にこのレーベルへのインタビューで彼らのことを「ソウルレーベル」と言った途端に拒絶されたからです。とはいえ、彼らが制作する音楽の多くが極めてソウルフルであることは否定できません。

ビッグ・クラウンについて初めて知ったのは、ポートベローラジオというコミュニティラジオ局に携わっていた時のことです。レディ・レイの「Do It Again」があちこちでかかっていた頃でした。その曲を聴いた時、私はすっかり固まってしまいました。初期のアレサ・フランクリンの雰囲気が色濃くありながら、今風のテイストも織り交ぜた曲。それを気に入ったのは大きな出来事でした。60年代ソウルが好きな私にとって、2015年から2016年あたりは、リオン・ブリッジズのファーストアルバム『Coming Home』を除いて、グッとくる曲がなかったからです。

ビッグ・クラウンでは他にも、ホーリー・ハイブやボビー・オローザ、レジェンドのリー・フィールズが要チェックです。ホーリー・ハイブは、ホーマー・スタインワイス(ザ・ダップ・キングス)とポール・スプリングによるバンドです。フォークにインスパイアされた最高に素晴らしいインディーズ版スウィートソウルを生み出しています。フィンランド出身のボビー・オローザは、レアソウルシーンを取り入れたビートが効いたメロディーに乗せた、より深みのあるクラシックなバラード風ボーカルが特徴です。

もちろん、60年代からリリースを続けているリー・フィールズも外せません。60年のキャリアを誇り、今もなおザ・エクスプレッションズとタッグを組んでソウルミュージックを世に送り出しています。ソウルミュージックがそれほどまでに長い年月を経て今に至るとは思いも寄らなかった人もいるでしょう。

Lady Wray / Big Crown Records

オハイオに本拠地を置くコールマインは、ソウルの優れた新人の宝庫です。まさにソウル好きのためのソウルレーベルです。この5年間でリリースされた(比較的)新しいソウルレコードの中で私のお気に入りの一枚、The Harlem Gospel Travelersの『He’s On Time』をリリースしてくれたレーベルでもあります。そんなわけで、このレーベルにはずっとありがたみを感じています。モダンゴスペルと称されるこのアルバムは、十代の少年たちのグループによるものです。全員がニューヨーク出身で、十代向けのゴスペルプログラムに参加し、R&Bアーティストであるイーライ・ペーパーボーイ・リードの指導を受けました。私は、彼らは今後数年で確実にブレイクすると思っています。

コールマインは他にも、ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズやケリー・フィニガンといった多くの新進アーティストを擁しています。ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズの『American Love Call』は、ソウルディーズ、ドゥーワップ、ソウルのインスピレーションが見事に反映された、私のお気に入りアルバムです。個人的には、ドラン・ジョーンズとアーロン・フレイザーというツインボーカルのコントラストが他のバンドと一線を画しているように思います。ケリー・フィニガンの「I Don’t Wanna Wait」は、初めて聴いた時から耳に残っていて、ずっとリピートしている曲。要するに、2019年は新しいソウルミュージックの当たり年だったということです。特にコールマインではそうでした。彼らの快進撃は今も続いています。

Top: Colemine Records Team / Bottom: Harlem Gospel Travellers

私は、ヌーボーソウルレーベルのパイオニアはダップトーンだと思っています。シャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングスとチャールズ・ブラッドリーが所属しており、二組とも2000年代後半から2010年代始めにかけてこのレーベルからリリースしていました。60年代と70年代のファンク系サウンドの影響を受けたソウルリバイバルの幕開けに貢献したレーベルです。このレーベルは、マーク・ロンソンやザ・ダップ・キングスのホーマー・スタインワイス(ホーリー・ハイブ)とも近しい関係にありました。ホーマー・スタインワイスは、私が2000年代で最も影響力があったアルバムだと思っている、エイミー・ワインハウスを象徴するアルバム『Back to Black』でドラムスを担当しています。ダップトーンでは、ソウルミュージックから派生したファンクやR&Bなども扱っています。ザ・ジェームス・ハンター・シックスの『Whatever It Takes』や、シャロン・ジョーンズの『I Learned the Hardway』は、私がずっと聴き続けている定番です。ダップトーンは、自社の最新のサブレーベルとしてペンローズ・レコーディングスを設立するなど、事業展開は順調です。ペンローズは、ソウルディーズというジャンルへのオマージュとして、スローでスウィートな(たいてい切ない)バラ-ドを、本場の南カリフォルニアから発信しています。とても素晴らしい、ノスタルジックな音楽です。私が個人的に注目しているのは、ジ・セイクリッド・ソウルズの「Can I Call You Rose?」、ジ・アルトンズの「When You Go (That’s When You’ll Know)」、ヴィッキー・タフォヤの「Forever」です。 「Forever」は、50年代のドゥーワップをリスペクトした癒やしの名曲です!

Thee Sacred Souls / Daptone Records
Scarlett O'Malley