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サブカルチャー

Night Tales:ミュンヘン

2023年7月
Words by BSTN Chronicles

ミュンヘンのキオスクカルチャーを巡るナイトライフをBSTNが紹介します。

ヒーローはマントを身にまとっているとは限りません。夜遅くまで営業しているというヒーローもいます。

ドイツ(あるいはドイツ語圏)の多くの都市では、地方によって「シュペーティ(Späti)」、「ブーデ(Bude)」、「トラフィック(Trafik)」と呼び名が変わるキオスクは、ナイトライフカルチャーに欠かせない存在です。というのも、キオスクがナイトライフの必須アイテムを提供している時間帯は、昼ではなく夜だからです 。

「Ladenöffnungszeitengesetz」(営業時間について定める法律)というドイツ語から、ドイツ人に関する2つのことを知れます。その1:ドイツ人はスクラブルが強そう。その2:ドイツの議会は、スーパーなどの営業時間についていら立たしいほど厳格である。

幸い、ドイツにはヒーローを意味する5文字の言葉があります。それは「kiosk(キオスク)」です。

バーからバーへとはしごする道すがら味わう冷たい飲み物や、今出てきたばかりのクラブの混み合ったダンスフロアに落としたライターに代わる新しいライターなど、キオスクは従来のお店が閉まっている時間の買い物で頼りになる存在です。

アメリカのエネルギー源はダンキンドーナツ、とはボストンに本拠を置くコーヒー豆焙煎業者の主張ですが、暑い夏の夜のドイツでは、この小さな雑貨店のようなキオスクがエネルギー源となっていると言っても過言ではないでしょう。街に繰り出した人々のための冷たい飲み物から、自宅でのバーベキューが延長戦に入った時の補給アイテムまで、キオスクではLadenöffnungszeitengesetzを回避してあらゆる商品を提供しています。

ドイツのナイトライフにおける十徳ナイフ的存在のキオスクですが、その店舗数は街によってかなり異なります。

特に地方では、1軒のキオスクが深夜の選択肢の中心地になる場合もあります。地元のガソリンスタンドに僅差で勝ち、メインストリートにある古びたパブに続く2番手の行き先として、パーティ好きたちに次の街に行くまでの燃料 を提供しています。

都市圏であっても、キオスクカルチャーはどこも同じというわけではありません。ベルリン(またはケルン)などの都市ではシュペーティが密集しているので、数ブロックごとに新しい飲み物を買って、街中のあちこちにあるキオスクで新旧の友だちと出くわしたり、街角のお気に入りのお店の近くやシュプレー川(またはライン川)沿いで日の出を眺めたりしながら、バーやクラブに入ることなく一晩中過ごせます。

これと対照的なのが、店の営業時間に関する決まりがより厳格なことで知られる、バイエルンの州都ミュンヘンです。キオスクはほんの数軒で、深夜の行き先は自動的に選択肢が少なくなり、価値 が上がります。地元の人たちはバーやクラブをうまく行き来しますが、旅行者はしばしば悪戦苦闘し、旅行ガイド『ロンリープラネット』に必ず載っている、イーザル川の近くのスポットに行き着くことになります。

しかしここでも言えるのは、夜の最後の一杯も、どこも同じというわけではないということです。

bstn.com/chronicles/