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サブカルチャー

レコードへのラブレター



Words by Scarlett O’Malley
Photos courtesy of the Museum of Youth Culture

DJ兼ラジオホストのスカーレット・オマリーが、レコードの収集と、その過程で知り合った素晴らしいコミュニティについて語ります。

「レコードを集め始めたのはいつですか」という質問は、DJとして、またコレクターとして、よく聞かれる質問です。特にここ10年の「レコードブーム」以降は、インタビューの際最初に聞かれることが多いです。2020年にはレコードの売り上げが1986年以来初めてCDを上回ったので、「ヴァイナル(レコード)」という言葉をたくさんの人の口から聞くようになったように感じています。

自分が生まれる前のサブカルチャーへの強い関心がレコードを好きになったきっかけです。私は、ドゥーワップ、ロカビリー、ロックンロールといった50年代の音楽だけを聴く家庭で育ちました。父は「ロックでなければ、正しくない」とよく言っていました。オールディーズの世界にハマった10代前半は、両親のレコードを夢中になって聴いていました。デジタルと違いレコードが実際に手に取れること、そしてその触感がたまらなく好きでした。

Joanna Weaving。ファミリーパーティでの即席DJブース(1970年代)。

サウサンプトンに住み、大学で歴史を学んでいた19歳の頃、ノーザンソウルにドハマリしていました。でも60年代の音楽やJackie Wilson、Wigan Casinoを知っているのが当たり前ではないことを知って驚愕しました。私がアフターパーティでかける1曲目はいつもノーザンソウル。ある夜、友人のフランが何気なく「こういう音楽を流すラジオ番組を作ればいいのに」と言ったことを鮮明に覚えています。きっと深い意味はなく、彼女だって言ったことすら覚えていないでしょう。しかし学生寮のキッチンで彼女にそう言われるまで、自分には思いもつかないことでした。

Caxton Youth Trust。ロンドンのCaxton Youth Clubで練習中の3人のティーンエージャー(2000年代)。
Scottie Somerville。Scottieのアパートでコレクションのレコードを手にするLindaとScottie(1984年)。
Laura Austin。南ロンドン、カンバーウェルのベッドルームに設置されたデッキの後ろにいるLaura(1989年)。

その2年後、まさにそれが現実になりました。「Scarlettのドゥーワップとノーザンソウル・ショー」をスタートすることとなり、頭のなかでアイデアがパッとひらめきました。ようやく自分のやりたいことがはっきりしたのです。ゲストに招いた地元のレジェンドSoul 45のミックスを聴いて、初めてDJが何かということも知りました。「そのレコード持ってる! それも持ってる!」と彼らがシングル盤を回すたびに、叫ばずにはいられませんでした。するとMarkが、「レコードをたくさん持っているのに、なぜプレイしないの?」と聞いてきたのです。私のようなシャイな赤毛の女の子が大勢の前でレコードをかけるなんて無理だと思いました。けれども、決心するまでそう時間はかかりませんでした。スーパーの袋にシングル盤を詰め込んだ私は、大学にあるバーまでツカツカと向かいました。当時は、それがこんなにも素晴らしい旅のスタート地点になり、今の私を形成することになるとは思ってもいませんでした。大学を卒業する頃にはDJ、ラジオのホスト、そして正真正銘のレコードコレクターという顔を持つ、新しい女性になっていました。レコードを買ったり集めたりしていると、新しい世界への扉が開いていきました。さまざまなシーンで活躍する数え切れないほどの友人もできました。いまだにソウルシーンで勃発する「リイシュー対オリジナルプレス論争」について議論し、執筆したこともあります。

Johnny Woollard。ソウルナイトでBarrabasの“Heart of The City”のレコードを掲げるふたりのDJ(1977年)
Rose Eli。Rose(おそらく聴いているのはBob Marley)とDansetteプレーヤー(1960年代)。

レコードショップと女性というテーマでパネルディスカッションをしたり、レコードに特化したミックスやシリーズを作ったりしました。今後は、Vinyl Factoryでたくさんライブをし、もっと頻繁にレコードショップに通ってコレクションを増やしていきたいと思っています。レコードは私の初恋であり、その恋は今も続いているのです。