Twitter Line Facebook Share
サブカルチャー

格子柄のフレッドペリー

2023年8月
Words by Paul Gorman

テニスのネットやチェス盤などに見られる素朴な正方形。フレッドペリ ーの 2023 年のコレクションでは、それらが織り成すブロックのような デザインを取り入れています。

正方形はあまりにシンプルでありふれた形状として軽視されがちですが、円形や三角形と並んで、いわゆる「神聖幾何学」の基盤を成す重要な形状でもあります。これら3つの形は、生命そのものをかたどるものであると考えられています。

そうした基本的な形は、アート、建築、デザインなどを決定付けるものとされています。特に正方形は、安定性、強固な基盤、秩序、不変の本質という4つの要素に象徴されますが、それらは正方形の構造を鑑みるとふさわしい表現と言えます。このことは、格子模様や四角形が、サッカーのピッチや、テニスのネット、チェス盤など、スポーツやゲームの枠組みになっていることにも通じます。

それらの幾何学的な配置は、サブカルチャーのルックスにも、すっきりとしたラインやきっちりとしたスタイルをはじめとして、昔から取り入れられてきました。そのことは、スマートさ、こだわりの構造、完璧なディテールがファッションでもビジュアルアイデンティティでも重視される、モダニズム、モッズ、スエードヘッズ、ツートーンズの過去数十年にわたるスタイルにも表れています。

そして、スポーツとサブカルチャーが交わるところに存在しているのが、フレッドペリーのシャープなスタイルです。幾何学模様は、ライブイベントのグラフィック、色違いのスクエアパイピング、一部のアウターのライニング、クラシカルなチェック柄にモダンな配色を取り入れたシャツ、シグネチャーである5-4-4のティッピングを編み込んだポロシャツなど、ブランドのビジュアルアイデンティティにおいても顕著な役割を果たしています。

このたびヘッド・オブ・クリエイティブのジョン・テートと共にデザインチームが作り上げたフレッドペリーの最新コレクションでは、過去の関連性にとらわれず、一目でインパクトを与えるさまざまな幾何学模様を用いて、それらを使用したデザインのアップデートを図っています。

実は、最初にインスピレーションの源となったのは、フレッドペリーのアーカイブをたびたび探究していたジョンが見つけた、2000年代初期のデジタルカモフラプリントのトップスでした。

ジョンは次のように語っています。「それを見つけた瞬間、これだと思いました。見てすぐに、ピクセルとグリッチとノイズが入り乱れるデジタル空間を想起させる、現代への訴求力を感じました。すぐに、新しいコレクションで正方形のモチーフをいろいろ使ってみるにあたっていいスタートを切れるだろうと確信しました。正方形はさりげないものの目を引くので、それ自体がビジュアルの表現になります。そこで、プリント柄だけでなく、ワッフルやニットの生地の織り方など、いろいろな使い方をチームと一緒に考えました。」

その結果、クォーターニットのリビアカラーシャツや、定番の半袖ニットトップス、ワッフルジャケット、大きな正方形をプリントしたセーターなど、新しいコレクションアイテムがそろいました。また、ローレルリースのアイコンが格子模様になったデザインや、きっかけとなったデジタルカモフラプリントのアップデート版もあります。

さらに、ありふれたスカ風のデザインとは一線を画す考え抜かれたモダンな市松模様や、黄色とクリーム色のパイピングを袖にあしらった活気あふれるカラーコンビネーションが、新しいコレクションのモダンなテイストを引き立てています。

ジョンは次のように話しています。「今回のコレクションでは、モダンさとグリッチのテイストを追求しました。視覚的なノイズをもたらすアイテムを取りそろえています。」