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サブカルチャー

エイミーズ・プレイス

2022年4月
Photos by Chazz Adnitt

2011年にAmyの家族によって設立されたAmy Winehouse財団は、薬物やアルコールの乱用が若者に与える影響を防ぐために活動している公認慈善団体です。同団体は、イギリスの住宅供給会社Clarion の協力を得て、依存症を克服する若い女性のためのリカバリー施設「Amy’s Place」を設立しました。

大通りから一本入ったイーストロンドンの静かな通りに、鮮やかな赤いドアの小さなアパートが並んだ一画があります。建物に入ると、インスピレーションに溢れる言が書き留められたホワイトボード、居心地の良いリラックススペース、そしてAmy Winehouseの肖像画を囲むように楽器が置かれたミュージックルームが迎えてくれます。暖かい季節に利用されるという裏庭は、ガーランドで飾られ、ガーデンファニチャーやバーベキューセットが置かれた静かなオアシスとなっています。

「Amy’s Place」は、薬物・アルコール依存症を克服する18歳から30歳までの若い女性のためのリカバリー施設です。ここは完全な治療施設でもなく、ひとり暮らし用のアパートでもありません。そのふたつの中間に位置する国内唯一のプロジェクトであり、女性たちが自立し、成功するための支援を受けることができるセーフスペース(ありのままの自分でいられる場所)です。

「Amy’s Place」の特徴について詳しく知るべく、私たちは2名の居住者に取材を申込みました。

Amber, Amy's Place

あなたにとって「Amy’s Place」とはどのような場所ですか?
Amber:ここは、リカバリー中の女性のためのセーフスペースです。ここには本当の意味でのコミュニティがあります。なので、ひとり暮らしを送りつつ、いつでもサポートを受けられるのです。私はこれまでずっと逃げ続けるような生活をしてきたので、ようやく落ち着いて自分の家と呼べるほど落ち着いて過ごせる場所にいられることは、本当に素晴らしいことだと思います。
Kelly:自分ではどうしようもないときに、支え合い、助け合える女性たちのコミュニティです。多くの女性にとって、初めて安心できる場所であり、これまでの生活を断ち切るきっかけになります。私は、初めてまともに呼吸ができるようになったような気がします。人生で初めて安全な場所にいると感じられました。正直言って人生が変わりました。

どのような経緯でここに来たのですか?
Amber:私は12、13歳頃から依存症と闘ってきました。かなり早い時期にドラッグに出会い、依存症になりました。あっという間に手に負えなくなりましたが、同時に私にとっては逃げ場のような存在でした。自分が住む世界や人生があまりに辛く、ドラッグが逃げ道になったのです。長い間、私はドラッグで嫌なことを忘れるようにしてきました。私の依存症はエスカレートし、施設の入居を繰り返すという、悪循環に陥っていました。出口が見えませんでした。どんどん状況が悪化して、生きているのが嫌になるくらいでした。
16歳のときにリハビリ施設に入りましたが、強制的に連れてこられたようなもので、まったくうまくいきませんでした。その後何年も、刑務所やリハビリ施設、精神病院などを出たり入ったりしていました。最後にリハビリ施設に行ったのは、私を助けたいという上司の意向でした。そのとき初めて、リカバリーにきちんと取り組んだのです。その後、AA(断酒会)で「Amy’s Place」のことを知り、自分から入居を希望しました。
Kelly:私は自分の感情とどう向き合えばいいのか、自分の感情をどう処理すればいいのかわからないまま育ちました。かなり多くのトラウマを経験しました。学校で いじめに遭いましたし、精神的、身体的、感情的な虐待に苦しめられてきました。子どもの頃は、そうした感情や状況にどう対処していいかわからず、心の中に溜め込んでしまうのです。トラウマになるような体験をすると、脳がそれを適切に処理できなくなり、頭の中でその出来事を何度も繰り返すことになります。そのため、私は若いころから薬物やアルコールに手を出し、その後、いくつかの精神疾患を抱えることになりました。ドラッグは私にとって逃げ道だったのですが、次第に私の人生を支配し破滅するようになりました。
カウンセリングや薬物治療サービスなどのサポートを通じて、何年もクリーンになろうと努力してきましたが、限界に達し、もう無理だと思いました。昨年、リハビリ施設に行き、その後、二次医療を経て、男女混合のソーバーハウス(依存症患者が生活する施設)に入りました。数カ月間、AAに通った後、「Amy's Place」に住む女の子と出会い、すぐに意気投合しました。彼女がここを勧めてくれて、入居することになりました。

ここではどのような支援を受けていますか?
Amber:「Amy's Place」に人生を救われたような気持ちでいっぱいです。16人の女性と同じアパートに住んでいて、みんながリカバリー中なので、つねに同じ志を持っている人たちに囲まれています。本当に助かったことは、毎日30分間、「チェックイン」という時間があることです。これは、自分自身のこと、そしてお互いのことを確認し合うための時間です。自分が今どのような状態にあるのか、じっくりと確認するのにとても役立っています。ここでは、精神的なサポートと実用的なサポートの両方を受けることができます。たとえば、私は復学したいと思っているのですが、その際のサポートをここのスタッフはしてくれます。また、「RE-SOURCED VINTAGE」という自分のビジネスを確立させ、拡大するためのサポートも受けることができるので、これは大変役立ちました。依存症はひとりで戦う病気ですが、ここには真のコミュニティが存在します。本当の意味での帰属意識です。今までの私にはなかったものです。
Kelly:ここでのサポートによって私の人生は変わりました。入居当初、私は不安定で、どうやって前に進めばいいのかわかりませんでした。自分の周りに壁を作り、誰も受け入れることができませんでした。長い間、生きるか死ぬかのサバイバルモードが続いていて、それが前進を阻んでいたのだと思います。でも今は、人に頼ってもいいんだと思えるようになりました。この場所がそう教えてくれました。
ここでは、アートやサウンドセラピーなどのセラピーセッションを定期的に行っているほか、私が利用したビジネスのサポートや助成金制度もあります。そのおかげで「KG Garms」という自分のストリートブランドを立ち上げることができました。これは非常に大きなことです。今年の8月にリリースする予定です。また、利益の一部をチャリティに寄付し、恩返しをしようと思っています。

「Amy’s Place」が特別な理由は?
Amber:このような場所の存在を私は聞いたことがありません。私の知る限り、他にはないと思います。「Amy’s Place」にいると、支えられていることを実感できます。本当に助けられていると感じるのです。新しい人生を歩むことができました。この場所にいられることにとても感謝しています。
Kelly:女性専用なので安心できます。入居当初は多くの人がまだ重い症状を抱えていて、とても弱った状態です。通常、リカバリー施設では弱者を食い物にする人たちがいるものです。ここに来る前に私が入っていた施設がそうでした。「Amy’s Place」は最長で2年間暮らすことができ、その後は新居探しを手伝ってくれます。自分だけの部屋で暮らすことをずっと望んでいました。ここは安全に過ごせる場所だとわかっているので、本当によく眠れます。

Kelly, Amy's Place

リカバリーを始めたばかりの人に、どのようなアドバイスをしますか?
Amber:大変だと思いますが、とにかく戦い続けてください。最初は辛くても、次第に楽になるし、改善されます。良いときも悪いときもありますが、私がやったことはただ戦い続けたことです。再発したときもそうでした。希望を捨てないでください。明けない夜はありません。かならず光が差します。そう感じられるとは限りませんが、必ず楽になります。
Kelly:ゆっくりと一歩ずつ進めばいいのです。一歩が難しかったら半歩でも大丈夫。他人と話し合うのは非常に意味がありますが、自分に合った仲間とミーティングをすることがさらに大切です。
私が本当に大変だと思ったのは、以前の生活から抜け出すことでした。まず自分の問題を客観的に捉えることが大切です。今では、友人がお酒を飲んでいても自分は 飲まずにいられます。お酒を飲まないときの自分のほうがずっと楽しい人間だと実感しているからです。この境地に到達できるとは思っていませんでした。周りが飲んでいたら自分も飲みたくなったり、辛く感じたりすると思っていたんです。自分の問題を受け入れること、そして良い仲間と一緒に過ごすことが大事ですね。

Amyが残したものについて、彼女はどう感じていると思いますか?
Amber:彼女は「Amy’s Place」のすべてを誇りに思っているんじゃないでしょうか。彼女の悲劇的な出来事があったからこそ、このような前向きな場所が生まれたのです。彼女が得られなかったかもしれないサポートを、私たちは得ているのです。
Kelly:彼女が救った命の数を知ったら、きっと驚くと思います。トラウマになるような経験をした女性たちが、切実に必要としているサポートを受けることができる 場所です。「Amy’s Place」への感謝の気持ちが大きすぎて言葉に表すのは難しいですが、とにかく人生が変わる場所です。ここは文字通り私の人生を取り戻してくれました。

Amy Winehouse財団の活動の詳細については、公式ウェブサイト(www.amywinehousefoundation.org)をご覧ください。

フレッドペリーは、Amy Winehouse財団とのコラボレーションを続け、同財団の重要な活動を支援する寄付を毎シーズン行っています。

Amy Winehouse財団  英国公認慈善事業登録番号1129409(イングランド・ウェールズ)