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サブカルチャーライブ

オール・アワ・トゥモローズ プレゼンツ:ナヤナ・アイズ

Words by Dani Ran
Photos by @shotbymelissa_ and @jessicaelizaross

フェスティバルシーズンが終わりに近づく中、オール・アワ・トゥモローズでは、盛大な締めくくりのイベントが開催された。毎年恒例の新しい音楽フェスティバル2日目は、新進気鋭の5組のアーティストたちが100 Clubを完全に乗っ取り、その空間を一変させた。昨夜、その歴史の長さ同様、文化的で多様性に富むこの会場に集結したアーティスト、DJ、そして観客たちは、フィルターとボリュームをフル回転させ、忘れられない重要な一夜を創り出した。

ショーの火蓋を切ったのは、ロンドンを拠点とするプロデューサーであり、シンガーおよびシンガーソングライターとしても活動するNia Archivesだ。Niaは礼儀正しく「みんな、ジャングルチューンの用意はできているかしら」と切り出し、自作の曲とジャングルのクラシックをまじえてプレイした。ファンのお気に入りである『Sober Feels』や最新シングル『Headz Gone West』では、曲に合わせて歌い、踊る観客たちから、NiaのDIYなアティテュードとスタイルを見て取ることができた。ヘビーなブレークビーツのドラムの合間にNiaがマイクに飛びつくと、そのエフォートレスなネオソウル・ヴォーカルが観客をあっという間に惹きつける。ニューカマーである彼女だが、長くこのシーンに居座る存在になるであろうことをしっかりと知らしめた。

Nia Archives

その奇抜さでNiaのエネルギーに同調したのは、ロンドンを拠点とする覆面ラッパー TaliaBleだ。「機能不全のラップオペラ」を自称するTaliaBleは、観客にパンチのきいたリリックを投げかけ、観客も嬉々としてレスポンスした。アイコニックなバラクラバとフリルの襟を身につけた怒れるラッパーがテーマとするのは、ロンドンに巣喰い、増大する社会的不公正。その強烈な言葉を、観客は熱く受け止めていた。真のパンクスタイルにのっとり、はステージから飛び降り、観衆をモッシュピットの渦に巻き込んだTaliaBle 。そのパフォーマンスは、100 Clubのオーディエンスの誰もがずっと気にかけていた、痒いところに手が届くような、さらなる欲求を掻き立てられるものだった。

TaliaBle

この夜、3番目にステージに上がったのは、ロンドンを拠点にする素晴らしいシンガー、RADA。自身と似た低音のLo-Fiミュージシャンに続いて登場したRADAは、繊細なシンガーソングライターだ。この日は、トラップの影響を受けたR&Bビートで優しく観客を魅了した。新旧のシングルレパートリーを織り交ぜながら歌うRADAの、ステージ上で際立つエレガントさは、経験豊かなパフォーマーでさえも自らに取り込みたいと思うだろう。未発表のシングルを数曲歌って盛り上げた後、最後に柔らかなコール&レスポンスで最新シングル『FWTG』を披露。会場をおおいに沸かせた。

RADA

次にステージに立ったのは、人気急上昇中のルートン出身のラッパーBXKSだ。伝統的なイギリスのラップビートをベースにした実験的な表現で、これまでにもSkeptaなどから称賛されてきたBXKS。昨夜のパフォーマンスは、彼女のその輝きはまだ序章に過ぎないことを証明するものだった。初のスタジオアルバム『Full Time Daydreamer』を発表したばかりのBXKSは、アルバムの収録曲から数曲を披露。さらに未発表曲をプレイし、オーディエンスを虜にした。中でも人気曲『Packed In!』では、観客全員がサウンドに合わせて体を揺らし、まさに一体に。ステージ上をすばやく歩き回りながら、何気なくリリックを口にするBXKS。彼女が英国で最もエキサイティングな新人である上に、最もクールで洗練されたラッパーでもあることは疑いようがない。

BXKS

心を打つパフォーマンスの続く一夜の締めくくりには、観客が心待ちにしていたヘッドライナーのナヤナ・アイズが登場。ロンドンを拠点とするミュージシャン、ナヤナのプレイは、それが初めてのフルバンド演奏であることを全く感じさせないものだった。ラッパーで、シンガーでもある彼女は、洗練されたジャズミュージシャンのバンドをバックに、スタジアムに匹敵するパフォーマンスを披露。観客を心から楽しませた。熱のこもった歌声と、彼女のサウンド特有の滑らかな語り口が入れ替わるパフォーマンスは、洗練されつつも断固とした、力強いものだった。ビートも呼吸も完璧に安定。それまで時間をかけて培ってきたものが形になってきているのは明らかだった。

Nayana IZ

昨夜の女性のみのラインナップは、男性優位の業界に、新鮮な空気を送り込んだといえるだろう。いまだ公平とはいえない音楽業界。性差のバランスの正常化を目指す戦いは進展がなく、終わりがないようにも感じられる。だがありがたいことに、昨夜のライブは希望を感じさせるものだった。