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サブカルチャーライブ

オール・アワ・トゥモローズ プレゼンツ: エノラ・ゲイ

Words by Paul Flynn
Photos by @shotbymelissa_ and @jessicaelizaross

デジタルの世界に閉じこもっていた一年を経て、毎年恒例の不屈の音楽フェスティバル、オール・アワ・トゥモローズが100 Clubに復活したことに、なによりも安堵している。このイベントは初期にスクイッド、ブラック・ミディ、ブラック・カントリー・ニュー・ロードなどがヘッドライナーを務めた実績がある。つまり未来の注目すべき音楽に、必ず遭遇することになるのだ。

昨晩は、その瞳に若々しい明るさを宿した5組のバンドが登場。パンデミック後初めて、レッド&ホワイトで装飾された、誰もが知るロンドンで最も価値あるステージに、アーティスティックな情熱たっぷりのユニークなサウンドを届けた。

印象深いスタートを切ったのは、ロンドン在住の3人組Honeyglazeだ。そのサウンドは、ケイト・ル・ボンの神秘的なインディーロックを西洋風のゴシック調にアレンジしたもの。シンガーAnouska Sokolowは、四角いボディーのギターを振り回し、光り輝くメロディーを雨のように降り注がせながら、ミッドウエスト・シャッフルのリズムセクションを際立たせた。Sokolowには強い南部訛りがある。その歌詞はシャープで、口調はまるで催眠術のよう。溢れんばかりの100 Clubのオーディエンスはすっかりその術にかかり、とろけてしまった。

Honeyglazeは、デビューシングル『Burglar』がリリースされてからわずか数時間後、魅惑的な特別バージョンを気負わずに披露してくれた。こういう曲を耳にすると、まったくの新人が、なぜ一年足らずのうちにSpeedy Wundergroundの最も輝かしいニューカマーに成長したのか、自ずと分かってくる。

Honeyglaze

Honeyglazeに続いてアイコニックなステージを引き継いだRegressive Leftは、「LCD Soundsystemの“L”がLuton(ルートン)って意味だったらどうする?」という、みんなが聞きたくてうずうずしていた質問の答えを用意していた。2000年代初頭のDFAレコーズのサウンドを取り入れながら、自分たち独自のやり方で上手く包み込んでしまっている。どこまでもスペクタクルな三人組だ。フロントマンのサイモン・タイリーが、バラエティに富んだちぐはぐなサンプラーで割り込み、ドラマーのジョージア・ハーディのビートの効いた演奏とウィル・クロスビーのソニック・ユースなギターが、その音をさらなる高みに導く。

『Cream Militia』の最初の音から、Regressive Leftは、軽やかに恍惚とするエネルギーの中に入っていく。曲のベースラインを描く洗練されたシンセサイザーの振動にシンクロして観客も揺れ動く。『Take the Hit』は特に強烈だった。激しく弾けるギターが、タイリーのニューロマンティックな歌声と、ハーディのモーターリックなドラミングがぶつかり合う。カオスの中、熱気は最高潮に高まり、「the left must Take the Hit」と叫び合うオーディエンスも現れた。素晴らしい”6本足のノイズマシン”である彼らは、会場を歓喜で震え上がらせ、躍動感あふれるデビューシングル『Eternal Returns』でステージを締めくくった。

次のグループがチューンアップする間、スーサイドのGhost Riderをプレイし、ニューヨークフレイバーを高めつつ、Regressive Leftが残していった観客の激しいエネルギーをコントロールしたのは、エノラ・ゲイのDJ。

Regressive Left

そして3番目にパフォーマンスしたのは憎たらしい4人組、オートモーションだ。リアム・ギャラガーの息子であるレノンがリズムギターとヴォーカルの一部を担当することで知られる同バンド。だが、その複雑なサウンドの謎を解き明かす鍵は、それだけではない。ブラック・ミディと同じように、彼らの音楽もまた、様々な影響を吸収し、それらをまったく新しいものとして融合した、広大なスペースジャムで構成されているのだ。厚みのある一枚岩なリフが際立つ、フェイスメルティング系のストーナーロックの高まり。ひ弱なスリントのパラノイア。ノイズロックな一節は、ギャラガーとリードギタリストのジェシー・ヒッチマンを、ソニック・ユースのベスト盤で垣間見られるロナルドとサーストンのケミストリーにシンクロさせる。

年の初めに発売されたばかりのEP『In Motion』の収録曲をアレンジし、さながらスワンズのアンプへの崇拝のように長々と演奏したオートモーション。この夜一番騒々しいバンドという映えある称号は、こうして彼らのものとなった。すでにEPを発表している彼らは、他の多くのバンドにはない頑固さと実験的な意欲に溢れている。この日のセットは、最高潮に高まったホワイトノイズと、ドラムのオーティス・イートウェル・ハーストによる本物のパーカッシブな連打で締められた。

Automotion
Automotion

この勢いは、4番目のバンドでも衰えるどころか、さらに加速していった。ドゥーム・スウェイ・パンクグループのGrandma’s Houseは本物のパワートリオ。その音楽はグレースケールの喧嘩屋そのものだ。互いのボーカルをホットポテトのように投げ合う、ドラマーのポッピー・ドジソンとギタリストのヤスミン・バーント。『No Place Like Home』のような曲では、辛辣な歌詞をそれぞれ歌い上げる。

ゾーイ・ジンスマイスターのベースラインは悪意を含んで鳴り響き、バーントの悪魔的な演奏はガロン・ドランクの『Miserlou』のような、アシッドな褐色のサーフロックへと展開していく。ザ・ガン・クラブのムーンシャインパンクのようなサウンドが響いたかと思いきや、最後の曲ではバーントがギターをやめ、邪悪なESGへと逆転。Grandma’s Houseは、20分間の爆発的なライブの間中、正に人を惹きつける巨大な力だった。

スティーブ・ラマックはバンドの演奏の合間に新旧の名曲をプレイ。ジョイ・ディヴィジョンの『Digital』からヤードアクトの『Fixer Upper』へと繋げ、ヘッドラインアクトのエノラ・ゲイのために完璧なアペリティフを提供した。

Grandmas House

エノラ・ゲイはベルファストのバンド。観客は彼らのまさに耳をふさぎたくなるようなノイズをワクワクして待っているのだ。これまでに3曲リリースしており、すでにスタジアムを埋め尽くすのに十分なオーラを放っている。フロントマンのフィオン・ライリーを中心としたダイヤモンドのような戦闘隊形。ソーホーの会場中にプライマスのような軽やかなビートのベースラインが響き渡ったかと思うと、ジョエ・マクベイのギターによるマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン的なノイズシートが宙を舞い始め、ラップ・ロックというジャンルを斬新に体現する。

Enola Gay
Enola Gay

フロントマンのフィオン・レイリーは、ザック・デ・ラ・ロッチャを彷彿とさせる。彼のラップヴォーカルは、まるで祓えの儀式であるかのように、その口から力強く吐き出されるのだ。『Figures』や『Sofa Surfing』では、特徴的なアクセントのある彼の太いヴォーカルが、地獄の火を踏み鳴らす。『Birth of a Nation』のクレイプール風のベースラインは、まるでヘリコプターが飛び立つ音のよう。エノラ・ゲイのサウンドは、30分という短い時間の中でも十分危険だ。レイリーは実弾型のフロントマンで、いつでも爆発しそうな佇まいであるだけでなく、実際に予告なしに、頻繁に暴発する。

この夜のパフォーマンスは圧巻で、新しいバンドの中でも際立っていた。ラマックがかけるオルタナティブクラシックに身をゆだねていると、体中にアドレナリンがみなぎってくる。イギリスのミュージックシーンの未来は明るい。そう確信させてくれる夜だった。

Steve Lamacq