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サブカルチャー

ジャングル

超シャープなジャングルサウンド。その遺産を1990年代から現在までたどり、ジャングルのスタイルとサウンドがフレッドペリーの2023年コレクションに与えた影響を考察します。

2023年になった今も、「21世紀のクールな若者」の定義は定まっていません。
ストリートはネット上にも、リアルにも存在します。
男装女子と女装男子。
新旧のスタイルコードが混在しています。

フレッドペリーの2023年コレクション「Night Tales」では、1990年代から2000年代のアンダーグラウンド・レイヴシーンから派生したUKサウンドにオマージュを捧げています。そのエネルギーとベースライン、人と繋がりたいという原始的な衝動、インナーシティにおける人種・階級・カルチャーのマッシュアップ―サウンドシステムで振動する薄暗い空間で、何もかも忘れるのがレイヴです。

ドラムンベースの兄であるジャングルは、多文化国家イギリスのサウンド。フリー・パーティがナイトライフから遠のいて行く中、ジャングリストは自らのスタイルを取捨選択してはチケットを見つけ出し、着飾って夜の街に繰り出していました。ストロボが光り汗が煌めくダンスフロアを埋め尽くす、頭のてっぺんから爪先までプリント尽くしのスタイルや”ストリートで一目置かれる”ブランドスローガン。そんな中、リワインドが要求されます。

ウィンドラッシュ世代が持ち込んだサウンドシステム・カルチャーとブロック・パーティは、イギリスのファッションや音楽、新しいサウンドに多大な影響を及ぼしました。1990年代初頭には、レゲエ/ダブベースラインやヒップホップの高速ブレイクビーツが、電話のベルやサイレン、スタブ音やスネア音を細かくサンプリングしたレゲエスタイルのMCと切り貼りされていました。トラックの構築に使われていたのは、Amiga 1200のような家庭用のローエンドPCで走る、OctaMED 4などの8ビットのゲーミングソフトウェアでした。初期のサンプルパッケージにこのような限界があったことが、英国ジャングル・ラフネック・サウンドの欠かせない要素となりました。白のラベルにマジックでタイトルを殴り書きした少数生産のビニールレコードやリリースされなかったレコードがアンダーグラウンド・サブカルチャーに溢れました。

ところが、ミレミアム前に台頭してきたUKガレージやUKグリムによって、ジャングルはたちまちのうちに押し流されてしまいます。ジャングルサウンドはこれまでにも繰返しリバイバルされてきましたが、30年経った今、オールドスクールサウンドの定石を斬新にアレンジする新世代のプロデューサーたちが現れています。プレイリストの終盤では、伝統的なパターンを現代的に解釈するという2023年コレクションのコンセプトにかなうトラックをセレクト。プロデューサーたちは時代をさかのぼり、ニュースクール・ジャングルを今の時代にマッチさせているのです。