UltrashcallとMMAは残念ながらもう存在しませんが、当時このクラブに足繁く通った人たちにとっては簡単に忘れられる場所ではないでしょう。3つ目のBlitzは、世界的なパンデミックによってナイトライフ業界に大きな被害がもたらされたにもかかわらず、力強く前進しています。
数十年の時を経て、この3つのクラブは、コミュニティ、ヘドニズム、娯楽という共通の価値観を持つようになりました。そしてこれらの価値観は、ミュンヘンを真のテクノのホットスポットとして認識する地元のDJや世界中から集まった同じ考えを持つDJのミックス、つまりテクノというグローバルな言語によってユニークに表現されています。
Raver Girls - Munich, 1995ULTRASCHALL Ultraschallはドイツでもっとも影響力のあるテクノクラブのひとつとして広く知られ、テクノのベテランには懐かしく、若いクラバーには神話のような存在として崇められています。
営業期間：1994年-2003年
関わりの深い人物：Ultrashcallは、David Suss、Dorothea Zenker、DJ Upstartによって設立されました。レジデントDJには、DJ Hell、Monika KruseやRichard Bartzなどがおり、彼らはみんな世界的なレジェンドとなったのです。その他のレギュラーやスペシャルゲストには、Acid Maria、Jeff Mills、Robert HoodやCarl Craigなどがいました。
クラブについて：Ultraschallは10年近い営業期間中、途中で場所が変わりましたが、どちらも非常に風変わりな会場でした。Ultraworldというアンダーグラウンドなマンスリーパーティから発展した初期のUltraschallの会場は、郊外の閉鎖されたミュンヘン・リーム空港の食堂の白いタイル張りの厨房を再利用したものでした。1985年のSF映画『第5惑星』で使用されたセットや小道具をアップサイクルしたのはもちろん、サウンドシステム、照明、エアコンも創設者によって新しく整備され、その雰囲気と美しさはミュンヘンのナイトライフに新しい基準を打ち立てました。このクラブの音楽に対する実験的なアプローチは、ときには荒々しく、何でもありのテクノセットという結果をもたらすこととなりました。
Ultraschallの忘れられない出来事：ダンスフロア全体を巨大なベッドに見立ててアンビエントをテーマにしたパーティを開催したこと。トイレでDJが即興でプレイしたこと。Mathew Herbertがポテトチップスの袋の音をサンプリングしてセットに取り入れたこと。
Three classic Ultraschall tracks:
Liquid Air, by Air Liquide. Label: Blue, 1992
Global Warning, by K-Hand. Label: Warp, 1994
Paranoid Dancer, by Johannes Heil, (DJ Hell Remix). Label: Kanzleramt, 2002
DJ Dominic and Friend - Munich, 1995MMA CLUB (Mixed Munich Arts Club) 通常のナイトクラブとしての活動に制限されることなく、ギャラリーや劇場、レストランという形態を持ったMMA。活動期間は比較的短かったものの、ドイツが誇る最高峰のテクノとアフターアワーズの聖地としての評判を得ました。
営業期間：2014年-2019年
関わりの深い人物：MMAは、Mark Maurer、ミュンヘンで長年クラブプロモーターを務めたMathias Arifin、そして建築家のConstantin Mascherによって共同設立されました。また閉鎖までの5年間に、Ben Klock、Len Faki、Marcel Dettmann、Richie Hawtin、Charlotte de Witte、Adam Beyer、Maceo Plex、Amelie Lens、Ben Simsといった国際的DJをホストして大成功を収めました。
クラブについて：1930年代に建設された発電所を再利用したMMAは、不穏な歴史を持つこの地域に新しくポジティブなエネルギーをもたらしました。1930年代当時、ここはナチス党のために地下道でつながれたさまざまな施設のひとつでした。そして第二次世界大戦後にミュンヘン都市事業公社によって買収。2006年に閉鎖されて以来2013年まで空き家となっていましたが、300トン以上の鉄製タービン、機械類、パイプなどが敷地内から運び出され、この生々しくも幻想的な21世紀のナイトクラブが誕生。MMAは、2014年にメディアの大々的なファンファーレに包まれてオープンしました。
MMAのメインルームには460平方メートルの巨大なダンスフロアがあり、壁の高さも21メートルありました。地下には小さなエリアと、アート展やインスタレーションのための特別なプロジェクトルーム、その他ふたつのギャラリースペース。メインのダンスフロアの壁面に並ぶレンガ造りの窓は、夕暮れ時になると青と赤の色調でライトアップされ、魅惑的なテクノの音に身を委ねるクラバー達をドラマチックな聖堂のような雰囲気で包み込みます。MMAの創設者があらゆる人を受け入れる平等性を望んだことで、MMAには意図的にVIPルームが作られませんでした。
MMAの記念すべき出来事：翌日の午前10時まで、あるいは48時間ぶっ続けで行われたイベントの数々。ミュンヘンのプラーター島で開催されたポップアップのMMAビーチバーでは、ライブDJによる控えめなエレクトロ音楽をバックに、ヴィーガン料理とカクテルを提供。クロージングパーティでのAdam Beyerのセットで体験した陶酔と哀愁の時間は、ひとつの時代の終わりを象徴していました。
Three classic MMA tracks:
Emulador, by Robert S. Label: Monocline, 2015
Eurhythmic (Original), by Setaoc Mass. Label: SK_eleven, 2018
Architectural 03, by Architectural. Label: Architectural, 2010
Rave City - Munich, 1996
DJ T and DJ Acid Maria - Munich, 1994BLITZ テクノ（およびその他のエレクトロニック・ミュージックの変種）の精神を守り続けるBlitzは、気取らないクラバーたちに愛され、そのクリーンなインテリアデザインは建築ファンからも熱狂的な支持を得ています。
営業期間：2017年-現在
関わりの深い人物：Blitzのメンバーは、Charlie、Bob Beaman、Registraturなど、ミュンヘンの有名クラブで裏方として働いた経験がありナイトライフとテクノに精通した人ばかり。これまでにJeff Mills、Monika Kruse、Marcel Dettmann、Ben Klock、Carl Craig、DJ Hellなど、さまざまなスターがプレイしています。
クラブについて：1935年にコンサートホールとプラネタリウムのために建てられたドイツ博物館の跡地にあるこの建物は、1980年代には映画館に姿を変えた後、2009年から2016年まで放置されていました。そのポテンシャルに目をつけたのがBlitzのメンバーたち。2017年には大規模な修復と再構築を経てついにクラブがオープン。美しくデザインされたふたつのダンスフロア、ふたつのバーとチルアウトエリア、喫煙室、ベジタリアンレストランとビアガーデンを誇ります。Blitzのサウンドシステムは、VOIDの音響専門家による特注設計で伝説的な存在となっています。
視覚的・音響的な細部へのこだわりはもちろんのこと、Blitzの精神はオープンマインドで平等であることです。まずDJブースはダンスフロアと同じ高さに設置され、会場内での写真・ビデオ撮影は（Berghainと同じく）全面禁止。そのためゲストは周りの目を気にすることなく自由に過ごすことができます。音楽が好きで偏見のない人であれば、誰でも歓迎します。
Blitzでの出来事：2017年4月に行われたオープニングナイトはほぼすぐに600人の定員をオーバーして会場の外にクラバーたちが絶え間なく押し寄せ、メディアを騒然とさせました。2,000人以上の人が会場に入れず、近くの道路や非常口が危険なほどふさがれる始末。警察と消防が出動し、落胆した人たちはすぐにその場から立ち去るように命じられました。
Three classic Blitz tracks:
Raki (Andre Crom Remix), by DJ 3000. Label: Motech, 2018
Always wanting more, by Coyu. Label: Suara, 2020
009A [EQD009], by EQD. Label: Equalised, 2021
DJ T and DJ Acid Maria - Munich, 1994詳細はこちら：https://www.blitz.club/