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サブカルチャー

ドゥ・ナッシング@デフ・インスティテュート(マンチェスター)



2021年11月
Words by Charlie Brock
Photos by Aiyush Panchnanda & Holly Elizabeth

マンチェスターにあるデフ・インスティテュートは、いま最もエキサイティングなポストパンクバンドのラインナップにぴったりの会場です。

この日のライブは、マンチェスターをこよなく愛するホット・シングルズ・クラブのDJパフォーマンスで幕を開けました。ソウルやファンクや踊れる曲を織り交ぜたセットリストで、会場のバルコニーからローマ皇帝さながらに、信者であるファンに向けてノリのいい曲を次々と繰り出していきます。ほどなくして、リーズ出身のイングリッシュ・ティーチャーがトップバッターとして登場。いまイギリスで最も注目を集めている新人バンドの一つと言っていいでしょう。ファンのカルトな支持を集めている彼らのサウンドは、この夜かつてないほどに素晴らしく、一曲一曲があっという間でした。

ポストパンクシーンの影響を強く受けている楽曲では、ドライ・クリーニングのそれにも似た詩的な歌詞と幻想的なインディーポップが、ブラック・ミディやスクウィッドのようなスタイルのブレイクダウンやインストゥルメンタルと巧みに融合されています。そうして編み出された独特な音楽は、この上なく魅力的。まだお気に入りのバンドになっていないとしたら、もったいないと言うしかないでしょう。翌週には新譜をリリースすると約束したイングリッシュ・ティーチャーにぜひ注目してほしいのです。その人気は今後ますます高まっていくに違いないから。

再びホット・シングルズ・クラブのパフォーマンスを楽しんだ後、ブランケットマンのメンバーたちがステージ上にぴったり収まりました。オーディエンスとのやりとりもそこそこに、矢継ぎ早に曲を演奏。次の曲へと移る前に、ボーカル兼リズムギターのアダム・ホッパーがせわしなくビールをあおります。ファンに人気の曲と新曲を組み合わせたセットリストは、マンチェスターの熱狂的なオーディエンスの心に刺さりました。シーンを席巻する日も間近と思われるブランケットマン。各所から(当然ながら)称賛を得ている以上、つまらない曲など作れるはずもありません。熱い声援を送るファン層が拡大し続けている彼らには、大きな成功が約束されています。

続いて、マッシュヘアの奇人にしてインディーズシーンのレジェンドであるティム・バージェスが長い前髪から顔をのぞかせながら登場し、つかの間のDJプレイを披露しました。前述の皇帝を思わせるバルコニーのDJブースに陣取り、次のドゥ・ナッシングの登場に向けてオーディエンスを盛り上げるバージェス。ワインを選ぶソムリエのごとくよりすぐったトラック(ただしメルローではなくマッドチェスターのテイストを重視)を会場に響かせ、その役割を見事に全うしました。

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そして登場したノッティンガム出身のドゥ・ナッシングは、いまやシーンに君臨する存在です。盛大な拍手喝采を浴びてステージに上がる頃には、デフ・インスティテュートは観客であふれていました。このバンドは本当に愛されています。それもそのはず、数週間に渡ってイギリス全土を巡るツアーで磨かれたサウンドなど、パフォーマンスは秀逸で研ぎ澄まされたもの。その装いも洗練されており、メンバーはシャツとパンツのスタイルで、ボーカルのクリス・ベイリーはスーツの上下にブーツのコーディネート。ベイリーは、優れたフロントマンとしてのあらゆる資質を備えています。EPからの曲『Zero Dollar Bill』と『Glueland』で、オーディエンスの心を完全につかんでいました。ドゥ・ナッシングが繰り出すオフビートのアートロック・サウンドは、ポストパンクシーンの頂点で光り輝いています。自信に満ちあふれるプレイから、オーディエンスもエネルギーをもらえるでしょう。最後に新曲を披露してくれた彼らは、11月の凍てつく夜へと消えていきました。世界はドゥ・ナッシングのさらなる音楽を求めています。

そして再びバージェスが、ハッピー・マンデーズの曲とビールさえあれば誰もが楽しめた90年代を思い出すインディーズの名曲をかけ、この日の夜を締めくくりました。

結論として、フレッドペリーは最高の夜を過ごさせてくれました。楽しめるDJパフォーマンスとイギリスの新進気鋭のバンド3組をラインナップした、記憶に残る一夜でした。

James Griffiths
Hunny Gloss