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コーデュロイの芸術性

サブカルチャー

The Art of Corduroy

コーデュロイの芸術性

Words by Ben Perdue
Photos courtesy of the Museum of Youth Culture
2021年12月

コーデュロイがなぜアンダーグラウンドのルックス、フィーリング、サウンドを持つのかを深く掘り下げます。

コーデュロイは他の素材と異なり、すべてのものに多感覚的な深みをもたらすことができます。そして、その見た目、質感、動くたびに発するノイズなどの各要素を単純に足した以上の効果をもたらします。この畝(うね)のあるコットン素材は、パイル糸をカットし毛羽を出すことでベルベットのような手触りに。19世紀にランカシャー州の工場で開発されたため、イギリス国外では「マンチェスター」というニックネームで呼ばれています。その毛羽が立った仕上がりにもかかわらず丈夫な素材のため、もともとは労働者階級が着用していました。その後、デニム同様にカウンターカルチャーに採用されることになりましたが、コーデュロイにはデニムよりも鋭くより政治的なイメージが伴いました。サブカルチャーでの役割は、60年代~70年代の急進的な音楽シーンに根ざしています。フレッドペリー×ラフ・シモンズの次のコレクションは、クラブのフライヤーやピンバッジで埋めつくされたコーデュロイをイメージしました。あるいは、メイド・イン・イングランドのハリントンジャケットとして生まれ変わるかもしれません。触覚、聴覚、視覚がシームレスに連携するのです。

Photo by Rebecca Lewis

ひとつの感覚だけでなく、複数の感覚に働きかけるこの魅力は、有意義な体験をもたらすためにコンテンポラリーアートの展覧会で用いられる「多専門的アプローチ」に似ています。このような没入型のアート展は、Ben Broomeのような新世代のキュレーターによってさらに推し進められています。彼が手がける【Drawing a Blank】は、さまざまなアーティストやメディアをDIYで組み合わせる、型破りな会場で行われるアンダーグラウンドイベント。「『ニューヨーク・タイムズ』紙の批評家でも、10代のスケーターでも参加できるような、誰もがアクセスできる空間を作りたい」とBroome。

「そして音楽は、展覧会を身近なものにしてくれる素晴らしいツール。普段からコンセプチュアルアートに親しんでいる人はそれほどいないかもしれないが、ほとんどの人が日常的に音楽を聴いているから。だから【Drawing a Blank】の展覧会でいつもライブ演奏を行っている。クリストフ・シャソルのように驚くほど多感覚的な活動をしているミュージシャンを、私は「サウンドアーティスト」や「ビデオアーティスト」という位置づけでとらえている。彼らのような、枠にとらわれないアーティストに興味がある」

コーデュロイの魂にはリズムが織り込まれています。畝の太さに応じて変化する、独自のグルーヴを持つテキスタイルだといえます。この畝は、まるで指先で感じることのできる繰り返しのビート。さらに、歩くとき、踊るときに生命力を感じさせる摩擦音を奏でます。フレッドペリーとのコラボレーションでコーデュロイを使用したニコラス・デイリーの着想源にもなった初期のダンスホールのジャンボコードのフレア。スマートなモッズトラッカージャケット。レイヴファッションに見られるオーバーサイズの細畝のコーデュロイシャツ。このように、コーデュロイが多くの音楽的ムーブメントに訴えかけるのも不思議ではありません。コーデュロイは“音”のための生地なのです。

Photo by Normski
Photo by Gavin Watson
Photo by Gavin Watson

すべての感覚を呼び覚ます力を持つコーデュロイですが、この生地が持つ「感覚のトリガー」には「人それぞれの楽しみ方がある」という意味も含まれています。だからこそ、これほど幅広い層に愛されているのでしょう。なめらかな手触りやベルベットのような光沢から受ける印象は千差万別ですが、多感覚鑑賞できるアート展のように、重要なのは可能性の広さ。「複数の媒体を組み合わせることで、ギャラリーの空間がより民主的になると考えている」とBroomeは述べています。「すべての人にすべての作品を好きになってもらうことは不可能。しかしひとりでも多くの人がひとつの作品に共鳴してくれれば、私の仕事は報われる。多種多様な媒体を展示することで、より多くの人に受け入られやすくなる」

コーデュロイの特徴は、そのスムーズさ、高級感のある仕上げ、そして独特の音。これらが組み合わさり、身に着ける人に「没入感」を与えるのです。その多感覚的な魅力は、オーセンティックでありながら現代的な芸術性を兼ね備えています。コーデュロイの畝と畝の間で、個人的な関係性やユースカルチャーのムーブメントと深いつながりが生まれます。サブカルチャーには欠かせない存在であり、フレッドペリーでも繰り返し登場するテーマであるコーデュロイ。その理由は、コーデュロイはアンダーグラウンドのルックスとフィーリング、サウンドを永遠に持っているからです。

Photo by Gavin Watson