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昨年の音楽助成金の受賞者、エイデン

サブカルチャー

Meet Our Music Grant
Winner, aden

昨年の音楽助成金の受賞者、エイデン

2021年7月
Photos and video by Chazz Adnitt

フレッドペリーとニコラス・デイリーによる2021年度の音楽助成金を募集するとともに、2020年の受賞者であるロンドン在住のコズミック・ソウル・シンガー、エイデンをご紹介。

2020年10月、The Fred Perry x Nicholas Daley Music Grant (フレッドペリー × ニコラス・デイリー音楽助成金)を発表しました。これは、1名のインディーズアーティストに、今後音楽業界で活躍するために必要な支援を行うプロジェクトです。2021年の審査員を務めるのは、ジャイルス・ピーターソン、Bradley Zero、タラ・ジョシー、ヌバイア・ガルシア、ニルファー・ヤンヤの5名。

「音楽はフレッドペリーとニコラス・デイリーを結びつける力であり、コラボレーションにおいても重要な役割を果たしている。音楽業界の存続が脅かされている今、力を合わせて、英国の次世代のミュージシャンをサポートする音楽助成金を提供することにした」ニコラス・デイリー。

昨年は並外れた才能を持つアーティストたちが集まりました。ファイナリストのAMOS、Casey Tufnell、feeo、Wilfredの今後の活躍も楽しみです。

昨年の受賞者、シンガーソングライターのエイデンは、今年初めに伝説的なメトロポリス・スタジオで2日間のマスタークラスを受講し、業界のエキスパートの指導のもと楽曲をレコーディングしました。インタビューでは、エイデンに今後の展開について聞きました。

「私は特定のジャンルにカテゴライズできないミュージシャン。ルーツであるエチオピアと、生まれ育ったアメリカ中西部の中間点は、ちょうど大西洋の真ん中あたり。でもそれでいい。時空を超えて、心や精神、魂の中で、一緒に旅ができるような音楽を作りたいと思っている。これまでに誰も作ったことがないような音の風景や詩を作ろうとしている。古いものでも新しいものでも、何かをより深く、一緒に体感できるような音楽をね。」エイデン

フレッドペリー × ニコラス・デイリー音楽助成金の受賞、おめでとうございます。審査員を唸らせた感想は?
なんだか信じられないけど、とても光栄で嬉しいです!

助成金を知ったきっかけと応募した理由は?
大ファンのZakiaが審査員のひとりだったのでこの助成金について知りました。応募した理由?自分でもよく分からないけど、思い切って勝負するべきだと感じたから。

あなたの音楽活動について教えてください。どのように始めましたか?
(冗談じゃなく)音痴の母親と、一度もまともに歌えたことがない父親の子どもなのに、なぜか生まれてすぐ、まだ言葉がしゃべれないうちから歌っていたそう。つまり、私の音楽は不思議な劣性遺伝子から始まったということ。そしてありがたいことに、家庭と小学校で経験したさまざまな音楽活動によって素地が養われました。何度か偶然のチャンスに恵まれて、ちょうど大学に入学したばかりの頃、大好きな趣味というレベルを超えたものとして音楽について真剣に考えはじめて、宇宙物理学や数学の学位を取りながら、音楽学校のジャズ演奏プログラムに通うという生活を送っていました。このふたつを両立させる環境で、初めて意図的に曲作りとプロデュースを始めました。自分のアーティストとしてのボイスがようやく現れ始めたということと、音を通した感情の表現を試してみたいという好奇心が高まっていた時期だったと思います。その好奇心に後押しされて、創作プログラムを学ぶことができ、信じられないほど豊かなカルチャーがあるロンドンに移りました。今の自分を支えているのもその好奇心。現在は数々の音楽プロジェクトに携わり、コラボレーションを通して、それぞれのプロジェクトの方向性を探っているところ。他との差別化を図りつつ、インパクトのある手法でいかに伝えることができるかを模索しています。

音楽の助成金が重要だと考えるのはなぜ?
ミュージシャン(というかアーティスト全般)は、驚くほど不安定な生活を送っています。パンデミック以前からそうだったけど、今年に入ってからはさらにその傾向は増すばかり。アーティスティックな活動は、社会文化的にも集団意識にも大きな影響を与えているにもかかわらず、つねに低く評価され、搾取されています。芸術作品を持続的に奨励するための社会的インフラやメカニズムが一般的に欠如していることがその一例です。さらに、社会的・経済的資本を持たない人々は利用され、支配され、排除されるという音楽業界の力関係なども挙げられます。とにかくこういった現状で、助成金は作品を作るにも生活するにも支援の手段がないミュージシャンをサポートし、擁護するという重要な役割を担っていると思います。率直に言って、世間にはアーティストの将来性や重要性を懐疑的に思っている人たち(さらに足を引っ張ろうとする人たち)がいます。その中で、助成金は創作面と物質面におけるライフラインとして不可欠な役割を果たしています。弱い立場にあるアーティストや会場を支援するための新たな方法を考案するだけでなく、より長期的に社会や政治に参加するためにみんなが一丸となっていることにとても感動しました。あらゆるアーティストやアート空間の安全性と安定性がより確実なものになるよう、このような活動が私たちを導いてくれることを願っています。

あなたの音楽ジャンルは?
急進的なポップミュージックによって表現主義が突然変異し、スピリチュアルや宇宙的な魂のようなものを吹き込んだタイプの音楽。

音楽制作のプロセスは?何からインスピレーションを受けていますか?
具体的なプロセスはないかもしれません。音楽制作は非常に状況的なもの。ある瞬間や興味、感覚的な経験などに反応して行われることが多いと思う。でも作曲するときはいつも、感情の強さを中心に捉えようとしています。自分にとって意味のあるものを作るには、常に自分自身を拡張したり、さらけ出したり、問いかけたりする必要があります。このような作業は激しさや繊細さを伴うので、流動的に、そして根気強く音楽に取り組んでいます。進化するための空間や時間が必要であれば、その考えに従います。インスピレーションについては、人間の成長、愛、回復力、つながり、そして創造的な思考に深く感銘を受けています。また、歴史や自由をつかむために闘ってきた先人たちの物語からも。生きることに関する疑問、つまり最高の状態で生きるために、あるいは最善を尽くすためにどう頑張ればいいのか?という問いは、非常に重要で複雑であり、また謙虚な気持ちにさせてくれます。この宇宙における私たちの存在と環境は、感動的で、残酷で、難解で、幸せで…というふうに形容詞では言い尽くせないもの。私の場合、この宇宙に存在し、その中を進んでいくだけで、追求したいことが無限にあります。

音楽的に影響を受けたサブカルチャーは?
たくさんありすぎて切りがないので、最初に思い浮かんだ5つほどだけ挙げます。エチオピアの音楽。特に宗教的なプロテスタント音楽と50~70年代のエチオピアのジャズ、そしてコンテンポラリーミュージック(Gigi、Aster Awekeなど)。
これらは常に私の体内に流れる、故郷と歴史のサウンドです。 アメリカのフォークミュージック。最初につながりを感じたカルチャーのひとつで、歌詞が詩になり得るということ、そしてたったひとつの楽器やひとりの声がいかに感情に訴えるかということを教えてくれました。ロマン派のクラシック音楽と英国国教会の聖歌隊音楽。これらの音楽のハーモニーの技法には驚かされるし、精神性や情熱、想いを力強く表現しています。ジャズとR&B。うーん、この影響は本当に大きいですね。社会政治的な力として、そしてポピュラー音楽の革命者としても。また幅広い表現の手段としての即興、リズム、ハーモニーの使い方を学びました。実験音楽。大きなカテゴリーだけど、私が自分の芸術活動に深く反映させようとしている倫理観と創造的なアプローチでは共通しています。つまり音楽の構造やジャンル、伝統的な作曲法の枠を超えるという点において影響を受けています。

受賞後は何に取り組んでいますか?
助成金の受賞の知らせを受けて以来、さまざまな音楽活動を行っています。主に次のソロアルバムに収録する予定の曲や、素晴らしいコラボレーション作品もたくさん制作しています。

(受賞特典として)メトロポリス・スタジオでレコーディングをした曲について少し教えてもらえますか?
今回レコーディングした“Caution”は、順調にいけば近々発売されるアルバムの1曲目にしようと思っている曲。これは昨年の2月に作曲したもので、こっちにいる親友2人と一緒に作ることをとても楽しみにしていました。彼らと一緒にこの曲に命を吹き込むことができて本当に嬉しいです。

メトロポリス・スタジオでプロと一緒にレコーディングを行うという経験はいかがでしたか?
今回が初めての本格的なスタジオセッションだったので、エンジニアの方々の仕事振りを間近に見られるだけでも多くのことを学べたように思います。みんなとても親切で、リラックスしてレコーディングとミキシングができたし、彼らの隣に座って観察するだけでなく、音を作り上げるために一緒に何ができるか、何を足したり引いたりしたらいいか、と言う具体的な話ができました。これは私にとってとても有益でした。

今年は他にどんな予定がありますか?
年内にいろいろなものをリリースしたい。今度発売される親友が作った素晴らしいアルバムでは、私もいくつか曲を制作しています。また私自身のソロアルバムを、夏に完成させたいと思っています。そして実は、秋から博士号のために大学院に入
学する予定。まったく新しい冒険だけど、音楽活動と並行してやって行くつもり。これからの展開にとてもワクワクしています。

ミュージシャンを目指す人たちにアドバイスをお願いします。
誰もがメディアの重圧に押しつぶされそうになると思う。自分をいかに演出しなければならないか、人を感動させなければならないか、周りに迎合しなければならないか。そういったことに圧倒されてしまいます。でもようやくわかったのは、自分が身を置くコミュニティがいかに重要であるかということ。音楽を作ることは、最終的には自分自身のため、そして愛する人々、自分が喜んで共有したいと思う人々、自分を高めてくれる人々のためでもあります。本当の自分の姿を称えてくれるのはこのコミュニティだと思います。新人アーティストを含むすべての人はこういった類の愛とサポートを受けるべきだと感じています。