マッチ・フィット

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Words by Ben Perdue
2020年6月

テニスボンバーに敬意を

テニスボンバーはリスペクトされるべきアイテムです。ティップ(2本)ラインが入ったシャツ「M12」を除けば、他にこれほど長きにわたって活躍しているフレッドペリーのオリジナルアイテムはありません。そして「M12」同様、フレッドペリーらしさが最も純粋に表現されたアイテムです。1950年代にテニスコート用にデザインされたテニスボンバーは、コートまでの行き来に愛用され、クロスオーバーという概念が存在する前にストリートシーンで着用されたスポーツウェアでした。エフォートレスなブランドを支えるアイテムであり、年月を経ても変わることなく、今なお圧倒的な存在感を増し続けています。まさにフレッドペリーを象徴するアイテムなのです。

 

テニスボンバーは、当時としてはテクニカルで最先端のトレーニングウェアでセンターコートでも引けを取らない、究極にシンプルで機能的なウォームアップジャケットとして存在していました。スポーツウェアの歴史に、ファッション性が重視される時代が訪れることを暗示していたテニスボンバーが、クラブハウスの外で人々を魅了し続けたのも必然でした。一方、伝統的な白のテニスウェアは、科学に基づいたスタイルに沿って進化し、正反対の運命を辿りました。当初プレイヤーの間で人気を博し、比較的最近では英国で若者のムーヴメントに取り入れられたこのジャケットの背景には、テニスボンバーこそフレッドペリーのクロスカルチャー性を示す正統的アイテムだという事実があるからです。

フレッドペリーが、コンテンポラリー・ファッションの様々な場面でアイコンを提供してきたことを考えると、コム・デ・ギャルソンやマーガレット・ハウエルのようなブランドがアップデートの対象としてテニスボンバーを選んだことも偶然とは言えません。どちらのコラボレーションでも、アップデートはごく僅かで、オリジナルから大きく逸脱せず、ローレルマークにさりげなくイニシャルを加える、あるいはシンプルなモノトーンに戻すなど、ミニマムな方法でアレンジされました。マーガレット・ハウエルのランウェイショーでの登場は、テニスボンバーが持つ不朽のステータスにふわさしいトリビュートとなりました。

「シンプルなデザインの証であり、作りが良く個性があるものは、トレンドやスタイルの変化を超越することを示している」 と、オルタナティブで知的なメンズウェアを取り上げることで名高い雑誌「Fantastic Man」 の副編集長であるエリオット・ハワースは語っています。「スポーツウェアはカジュアルな服装の一部として溶け込む必要はなく、トレーニングウェアと普段着をミックスして着る人が街中至るところにいるのが良いと思っています。重要なのは、スポーツウェアがスポーツのフィールドを超えた広い世界で機能し、目にも美しいと思えるものであることです」

アーカイヴを10年ごとに辿っていくと、1枚のジャケットからその次の後継ジャケットへと繋がるシグネチャーディテールがはっきりと分かります。新しい素材、色、ライナーが導入されても、丸みのあるシルエット、ライン入りの襟とカフス、ロッカーの鍵をしまえる隠しポケット付きのテニスボールを模したポケット、ローレルマークは常に不変です。大胆なバリエーションは長続きせず、遅かれ早かれオリジナルのデザインに回帰していきます。この遍歴は自然な継続だと思います。その理由? それはテニスボンバーこそがアーキタイプで、改善を重ねてもこれ以上完璧なものにすることが不可能だからです。スポーツとサブカルチャーに影響を与えるストーリーを持ったデザインであり、フレッドペリーについて知るべきことはすべてこの1枚のジャケットに表現されています。テニスコートで誕生した、英国製のテニスボンバー。