NiNe8コレクティブ@サブカルチャーライブ

2019年12月

Subculture Live
Presents:
NiNE8 Collective
at the 100 Club

サブカルチャーライブ プレゼンツ:
100クラブに登場したNiNe8コレクティブ

Photos by Chaz Adnitt
Words by Chal Ravens

集団=コレクティブの力は常に個々の力の総和を超える、というのがNiNE8の基本ロジックだ。コレクティブのクルーはロンドンのベスト8に数えられる若者たち。ベッドルームラップとソウルフルなストーナリズムに独自のひねりを加え、今まさにブレイクスルーを起こそうとしている。

ラドブローク・グローブ出身のLava La Rueが率いるNiNE8に結集したのは、エネルギーに満ち溢れた野心的な若者たち(コレクティブの名前になっている98とはクルーのほとんどが98年生まれであることに由来)。その礎となっているのは、自らの力で成功を勝ち取った経験と自信だ。そうした彼らの特徴は、今年センセーションを巻き起こしたコラボレーションアルバム『No Smoke』にも表れている。もっとも、メンバーのスタイルはばらばら。Biig Piigがスペイン語の歌詞を官能的に歌い上げれば、LorenzoRSVはバッドマンスタイルで応える、といったように、それぞれに異なるフレーバーが主張しつつ混じり合っている。各自のスタイルをミックスしてひとつに纏め上げたことこそ、おそらく今のところ彼らコレクティブの最大の成果だろう。100クラブに巻き起こったモッシュピットへダイブし、ペットボトルを宙に舞わせるLa RueやLorenzoからは、オッド・フューチャーも霞むようなパワフルさが垣間見える。すでに独自のファッションスタイルまで確立しているこのコレクティブだが、NiNE8のエネルギーは間違いようもなくロンドン的だ。ヒップホップやソウル、サウンドシステムカルチャーの坩堝と呼ぶにふさわしい、ジェネレーションZの音楽となっている。

寒さが身に染みる12月の夜、Endevourが重低音を強調したDJセットで会場を温めたところで、最初のライブパフォーマーCassius Grayが登場。まずは攻めの曲で会場を盛り上げた後、テンポを落として彼らしいディラ風ストーナーラップへなだれ込み、今夜は’98年を基調とすることを明確にした。さらに「次はナイーブな魂たちに向けたメランコリックな曲を」と言ってLuther Kingを招き入れ、心落ち着くBoom-Bapなコラボ曲「A.M.」を披露。「I don’t care if this tune don’t bang(この曲がヒットしなくても気にしない)」と繰り返した。次に登場したのはLord Apex。ウータン・クランやエム・エフ・ドゥームからインスパイアされたトラックで、強烈に燃え上がるヒップホップ・シーンに落ち着きを取り戻させる、年季の入ったトリックスターだ。イーストコーストの冬にぴったりな大きなサングラスとファー付きパーカーは90年代スタイルそのものだが、その厳つい外見に反し、曲は「Sunny Daze」など、夢見心地のあたたかく幸せな時間を演出した。その次に登場したのはシェパーズブッシュ出身のFinn Foxell。こちらはさっぱりしたキャラクターだが、マック・ミラーとマイク・スキナーの中間のようなリリシズムを持つ、才気溢れるラッパーだ。Lava La Rueも加わって「Cool. Bless. Safe」を披露するなど、ジャムセッションはメランコリックかつスローに展開していくが、それでもフロアに巻き起こったモッシュの嵐は止まらない。さらに、「みんなはどうか知らないけど、俺はダンスが大好き。血行にもいいだろ」というFoxellの冗談交じりの言葉にあおられ、オーディエンスはスカを踊り始める。

NiNE8のDJによって、UKグライムとヴィンテージなスカがすっかり行き渡ったところで、ついにステージ上にコレクティブが集結。合体ロボ『ヴォルトロン』のごとく、ワンテンポごとに互いのエネルギーとラップが重なっていく。その中でもやはりリーダーはLa Rueをおいて他にいない。そのナチュラルなカリスマ性で、オーディエンスはステージ上でおどけるMCから目が離せない。「Treflip」ではネナ・チェリーとリサ“レフトアイ”ロペスが憑依し、オーディエンスがスクリームで彼女に応える度、何度もフロアにダイブする。100クラブのステージは広さで有名だが、NiNE8はあっという間にその空間を支配してしまった。Bone Slimはマスクをつけて大股で歩き回り、長いドレッドヘアのL!BAANは満面の笑みでMCを務めあげる。プロデューサーのMac WethaとKXRNはバックヤードでヘッドバンギング中。ソロでも有名なBiig Piigは努めて目立たないようしていたが、実は彼女こそが「Igrant」でメインを務めるLorenzoRSVの歌声の魅力を引き出すクールなサイドキックだ。ウェービーロングの黒髪とビッグサイズTシャツをまとった女性ラッパーNayanaは、ストーナースタイル然とした煙に満ちたライブに強烈なエネルギーで鋭く切り込む。「Twc」では「What you know about me(私の何を知っているの)?!」と叫び、非常に辛辣な歌詞で緊張感を高めていく。一方、フラットキャップを被り、ポロシャツにルーズなスラックスを合わせたNigeはテリー・ホールの現代版といった感じだ。まるで弟をヘッドロックするかのようにマイクを抱えこみ、荒々しくも朗々とした声を披露する。そして40分の演奏を終えたNiNE8は、シャウトとハグが行き交うステージを疾風のごとく後にした。その後は、P-rallelやJamz SupernovaといったDJたちがパーティのクロージングを担当する。NiNE8は比較的若い仲間が集まっているが、自分たちがステージで何をしているかをしっかりと理解している。ライブという王国が彼らの居場所だ。始まりはLa Rueの家に集う、心の通じ合う仲間たちだった。その集まりがやがて雪だるま式に拡大し、ローカルブームを巻き起こした。そして今まさに、斬新ではあるが統一されたDIYのエネルギーで、ロンドンから世界にブームを広めようとしている。