インディペンデント・ヴェニュー・ウィーク

インディペンデント・ヴェニュー・ウィーク

The spirit of
Independence

インディペンデントの精神

2019年1月
ロンドン

イギリス全土の地元密着型の小規模ライブハウスにスポットを当て、そのオーナーや経営者、スタッフたちを応援する「インディペンデント・ヴェニュー・ウィーク」。

今年6回目を迎える7日間のこのイベントは、独立系ライブハウスから素晴らしいバンドだけでなく、新たな考え方をサポートしてくれるファンも大勢生まれていることを祝うもの。ジェームス・エンデコットが語る。

僕がウエストヨークシャーの田舎からロンドンに出てきたのは、1980年代中頃だ。あの頃の僕は、素朴で世間知らずな、音楽好きの若者だった。音楽に夢中と言った方が正確かな。レコードを絶えず買い漁り、音楽週刊誌の愛読者だった。ライブにも通うようになった。ライブは何でも起こる場所だった。ロンドンに出てきて最初の数か月は、僕にとってすごく大きな意味があったよ。その後の人生が方向づけられたんだからね。その中心にあったのが、街のあちこちにあった独立系ライブハウス。キングスクロスのNew Merlin’s Cave、ポートベロー・ロードからちょっと入ったBay 63、その他もろもろ。ライブで徐々に顔なじみが増えていって、コミュニティに仲間入りしつつあることを実感したんだ。それは、居場所を求める同じ思いの仲間たちのコミュニティだ。お互いの同人誌を購入し合ったり、新しいバンドやライブハウスの情報を交換したりしてね。ライブにいけば独りぼっちだなんて感じなかった。後ろ髪をネズミのしっぽみたいに長く伸ばした奴や、友だちのジョンに似てるからって仲間内で「ジョンもどき」って呼ばれてた奴もいたよ。もちろん、さっきまでスリリングな演奏を聞かせてくれてたバンドのメンバーとも付き合うようになった。

僕たちにとって特に大切なライブハウスがあった。カムデンのThe Black Horseっていうハコなんだけど、今はもうない。何年も前に豪華なマンションに改装されてしまった。あそこでよくたむろってたもんだよ。バンドメンバー、レコード業界人、ジャーナリスト、ファン……。今思えば、一種のユースクラブみたいなものだね。でもエリートを気取るんじゃなくて、来る者は拒まずって感じ。一つのコミュニティだったんだな。

僕自身もそのうちあるバンドに加入してね。初ライブの会場はThe Black Horseだ。それが世界一自然なことだと思ったんだ。それから2年間バンド活動を続けて、ツアーで全国を回った。そしてどの街にもThe Black Horseみたいなライブハウスがあることに気付いたんだ。

みんなで集まってサポートしあいながら、クリエイティブなことをするグループっていうのが全国にあって、その中心には必ず独立系ライブハウスがあった

その後何年かして、1965 Recordsっていう自分のレコードレーベルを持つようになった。そのうち、ダンディーでザ・ビューってバンドがすごく盛り上がってるって情報を手に入れてね。早速ダンディーに向かい、バンドのライブに行ってみると、そこにはあのコミュニティがあった。アーティストやミュージシャンのコミュニティだ。彼らの生活は、The Doghouseっていう独立系ライブハウスを中心に回ってた。そこにみんなが集まって、意見を交換し、デカいことをやろうって夢見てたんだ。バンドメンバーにとっては心躍る時間だよね。で、最終的に彼らと契約したんだけど、最初にやったのは、バンドを45日に及ぶ大規模な全国ツアーに送り出すことだったね。小さな独立系ライブハウスだけを回るツアーさ。そこで同じ思いの人々に会わせたんだよ。

ザ・ビューのデビューアルバムはチャート1位になり、その記念に全国でライブをやった。彼らがこよなく愛するThe Doghouseでもね。ザ・ビューは今でも自分たちのルーツを忘れちゃいない。それに、The Doghouseや全国の似たようなライブハウスから受けたサポートなしでは続けられなかったことも分かってるよ。

独立系ライブハウスは音楽界の生命線だ。今も週に2回は通ってるよ。いつも驚かされるのは、ライブハウスとアーティストがサポートしあう、そのレベルの高さだ。サウス・ロンドンのブリクストンにあるThe Windmillsがいい例だね。ここには本物のコミュニティ意識がある。バンドや音響スタッフ、バースタッフ、プロモーター、オーナーが一丸となって一つの目標に取り組んでる。それは、ライブミュージックを支え、毎晩のライブで楽しい体験をしてもらおうってことだ。

歴史は繰り返すものだよ。僕の娘は2016年、グラスゴーの大学に入って、家を離れた。僕も普通の親だからね、娘には友だちを作って、楽しく過ごして、ホームシックにもならず毎日精一杯生きて欲しいんだ。グラスゴーに行ってから半年後、娘を訪ねたらとても楽しそうにしてたよ。住んでた部屋も悪くなかったし、勉強も厳しすぎないようで、それによく食べてた! 娘は、Broadcastっていう独立系ライブハウスでのバイトについて話し始めた。自分が特別な何かの一部だと感じていること、みんなが協力し合い助け合っていることを熱心に話してくれたよ。そして彼女が行ってるThe Rum ShackやThe Garage、その他もろもろのライブハウスについても話してくれた。ライブで出会った個性的な人たちのいろんなエピソードや、音楽、特にライブ音楽が自分にとっていかに大切なものかを語る娘の姿を見て、誇らしさで胸がいっぱいになったよ。

長年にわたって人々の出会いの場となってきた独立系ライブハウスよ、永遠なれ。

インディペンデント・ヴェニュー・ウィーク:2019年1月28日(月)~2月3日(日)