ホームゲーム

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Words by Ben Perdue

今はまさにトラックスーツの時代。誤解されることも多かったスポーツウェアの定番アイテムが次第に真価を発揮し、今ではいわゆる非労働者階級のシンボルとして軽視されることのないアイテムとなりました。ストリートウェアの主流をなすパーカやスウェットよりスマートで、技術的なパフォーマンス面での洗練度も高く、オリジナルのディテールはシャープな印象ですが様々な用途に適っています。オフィスと自宅のドレスコードがどこまでも曖昧になる中、トラックスーツは、ロックダウンを経験した世代のための、決してレイジーにならないレジャーウェア。さりげなくスタイルをアピールすることがこれまでになく必要になっています。

今はいつも以上に多くの人が在宅ワークのプレッシャーを感じている日々ですが、以前からそうしたライフスタイルの人々もいます。フリーランスの人や専業主婦・主夫に加え、新種の在宅ワーカーが登場しています。彼らはコンピューターに張り付いている時間が長く、会議や同僚に要する時間は短く、ビデオゲームをしたり、Twitchのようなプラットフォームで自分の活動をストリーミングするのが仕事です。ゲーミングが独自の言語やコミュニティ、ユニフォームを持つ現代のサブカルチャーへと発展する中、プロのeスポーツ選手は最もハードコアな形でこうした生活を送っていると言えます。

19歳のジェイク・ ‘スミーフ’ ・スミスはフォートナイトのプレイヤー。シーンで最も優れた成績を収めているロンドン拠点のチーム、Fnaticに所属し、昨年ニューヨークで開催されたワールドカップに出場しました。マリオカートからコール オブ デューティまで、父親に勝とうとしながら成長してきたスミスは現在、世界ランキング第44位。マンスフィールドで家族とともに暮らし、1日最長12時間も練習を重ねています。「いつも家にいるので、どうしても外の世界に抜け出せなくなる。まる一週間、外に出たり、太陽の光を浴びることなく過ごすことだってあるんだ」と言うスミス。「体力の維持が大事だと気付いた。だからトレッドミルが好き。走ると体力が付くし、気持ちにゆとりができるから」

トラックスーツはプロゲーマーのトレーニングウェアにしてチームのユニフォーム。自宅でウォームアップバトル(いわゆるスクリム)をプレイするときのリラックスした服装でもあり、大会のステージで競技を行うときのチームウェアでもあるジップアップジャケットには、あちこちにスポンサーのロゴが付いています。運動もゲームもウェブカムでの登場も自宅内の自分の部屋で行わなければならないスミスにとって、アイコニックなツーピース・ウェアの魅力は融通が利くことだそう。「身軽さと心地よさが服装選びのポイントだけど、それでも自分に自信が持てるスタイルが大事。だから僕はいつもトラックスーツなんだ。スマートに見えるからそのまま外出もできるしね」新しいメディアのスターがオールドスクールのスポーツウェアに身を包む理由が分かります。

60年代をルーツとしたクラシックなトラックスーツは、フレッド・ペリーがフットボールのイングランド・チームのトレーニングに参加したことでも知られる1966年以来、ほとんど変わっていません。リイシュー・コレクションに見られる、ジッパー付きファネルネック、ラグランスリーブ、テーラードトラウザー風のディテールは、スマートな装いの時代に生まれたアスレチックウェアのスタイルを、今も忠実に伝えています。こうしたディテールは、ハイテクな人工繊維、よりスリムなシルエット、ローレルリースのテープ使いといったアップデートを伴いつつ、現代的なトラックスーツにも脈々と流れています。まさに「ゲーム」の定義を変えつつあるシーンによって採用された、真のゲームチェンジャーと言えるでしょう。