フォークテール

SUBCULTURE

Folk Tail

フォークテール

2020年9月
Words by Ben Perdue

フレッドペリーの伝承に織り込まれたフィッシュテールパーカにまつわるストーリーは、ポロシャツ同様、サブカルチャーに欠かせないユニフォームのひとつとして、フレッドペリーにおいて特別な立ち位置を占めています。

様々な利点を備えたフィッシュテールパーカは、その優れた機能性によって軍用に採用され、軍の放出品として市場に出回ったことで一般に広まり、偶発的に人気に火が付きました。モッズスーツでスクーターに乗る際にスーツが汚れないように羽織ったり、夜遊びした後の自宅に帰る始発電車を待つときに寒さから身を守るために羽織ったり、持ち主の生活を記録する洋服として、またイギリス人気質に定着したクールなアウターウェアとして愛されています。

現代のイギリス大衆カルチャーのレンズを通して見ると、バッジ付きのフィッシュテールパーカが象徴しているのは、衣服と儀式や風習には密接な結びつきがあるという古代からの信仰と一致します。「それは、中世の巡礼者のバッジに由来している」と説明するのは、現代イギリスの慣習を深く見つめたFrontline Folklore展を間もなく開催するビジュアル・アーティストのベン・エッジ。「巡礼者たちが聖地から持って帰ってきたバッジの形をした出土品は、巡礼の証明であると同時に、聖人や信仰への忠誠心を示す証でもあった」。では、イラストレーターのパディ・スミスがデザインしたパッチやピンバッジによって不滅となったスクーターラリーやアンダーグラウンド・ギグとは、巡礼ではないにしても一体何だと言えるのでしょうか。

ストーンサークルや平屋根のエステートパブなど、英国の神秘的な風景を紹介する個人雑誌『Weird Walk』の共同創設者であるOwen Tromansは、昔のステッキに付けられていたバッジとの類似点を挙げています。「バックパックに付けるハイキング・パッチも似たようなもの」と彼は言います。「バンドのTシャツやフットボールシャツのように、さりげなくバッジを飾る場合もある。でも、Ideal Boilers West Bromwich AlbionFootball Clubの新しいチームキットを着ることと、誰もが知っている「No Smoking」サインを身につけることには違いがある。それぞれファンが違うってこと。ウォーキングパッチやバッジでも同じことが言える」。

バッジへの崇拝が集団や個人のアイデンティティとして機能しているという考えは、ベン・エッジの絵画に描かれた様々な風習を示すシンボルや、彼自身の衣服を飾る民族的なアイコンにも表れています。「10代のころ、バッジを付けることは自己表現のひとつの手段で、自分の好きなものを組み合わせて付けると、同じ好みや趣味を持つ人と繋がることができた。バッジのコレクションはそれ自体がフォークアートになる」。フィッシュテールパーカの場合は、パーカが着る人のストーリーを語るキャンバスであるだけでなく、そのストーリー自体がパーカを社会的アートへと変換させたのです。

そのような象徴的アイテムは、未来に起こり得る新たなストーリーテリングの方法にも関連しています。過剰生産される製品からバーチャルな空間での自己表現に目を向けるようになった現在、フレッドペリーの最新のパーカのような永く愛用できるようにデザインされたアイテムは、これまで以上に重要視されています。しかし、デジタルの世界と現実との境界が曖昧になってきた現在、サブカルチャーに従ったアレンジで独自に変換していくタイムレスなアイテムはどのような影響を受けるのでしょうか。

季節や物理的な制約を超えてより包括的な産業を創出することを目指した3DとVRのイノベーションを促すプラットフォーム、Institute of Digital Fashion(デジタルファッション研究所)の共同創立者であるCatty TayとLeanne Elliott Youngは「衣服にビスポークやデジタル的なアップデートを施すことこそ、今まさに私たちが構築しているもの」と説明しています。彼女たちの世界で、パーカはその次元をますます広げています。「ARとVRを使えば、IRL(In Real Life= 現実世界)とURLのリアリティを織り交ぜた物理的な製品を作ることができるし、その製品に関連したデジタル情報やストーリーを共有するITアセットも保持できます。つまり、リモート環境で自分のルックをアップデートできる可能性を秘めている」。

サブカルチャー・フォークロアの歴史の中心でありながら、現実とデジタル時代のバーチャル環境の両方で、着る人ひとりひとりのストーリーを語ることができるフィッシュテールパーカには、物理的な重要性を超越した神話的なパワーが備わっています。衣服と儀式や風習は密接に結び付いていますが、フィッシュテールパーカのように、時には衣服そのものが風習となることもあるのです。