ケイスリー ヘイフォード

COLLABORATION

Casely-Hayford

ケイスリー ヘイフォード

2020年10月

Words by James Anderson
Photos by Olivia Rose
Styled with original pieces from Casely-Hayford’s archive

ファッションデザインにおける最も優れた才能に恵まれた一人、チャーリー・ケイスリー・ヘイフォード。雑誌『GQ』からは英国のベストドレッサーの一人として、また『i-D』からはファッション界で最も重要な100人の一人として認められた、まさに「才気あふれる英国人」との称賛に相応しいデザイナーです。

彼が手掛ける「ケイスリーヘイフォード」は、上質なテーラリング、大胆なシルエット、見事に考え抜かれたファブリックを融合すると共に、アートやストリートスタイルの要素を取り入れた、さりげなくアナーキーなムードを放つブリティッシュ・ブランド。デビッド・ベッカム、ジェイミーXX、モス・デフ、ルイス・ハミルトン、タイニー・テンパ、ドレイクなど名だたる有名人がクライアントとして名を連ねています。

ロンドンを拠点に活躍するチャーリーは、80年代初頭から2019年に亡くなるまでパリ、ロンドン、東京のランウェイで反響を呼び続けた有力デザイナーであるジョー・ケイスリー・ヘイフォードを父に持ち、父親から得た豊富な知識と技術を積み重ねながら、自身の形成期を過ごしました。「ケイスリーヘイフォード」はジョーとチャーリー親子が2009年に共同設立したブランド。メリルボーンに本社を構え、現在も目の肥えたチャーリーの先導のもとに繁栄し続けています。

ファッション、音楽、サブカルチャーに対する長年に渡る情熱、そして流行に左右されず長い間着こなせる衣服やデザインへのこだわりといった点で、チャーリーとフレッドペリーは同じ価値観を共有していると言えます。この両者が互いの情熱を模索し合う新しいコラボレーションを実現。世代を超えたスタイル、ストーリーテリング、記憶といった要素に焦点を当てながら、冒険的なテーラリング、ニットウェア、装飾でフレッドペリーのクラシックなアイテムを再解釈したコレクションとなっています。今回、チャーリーにこのエキサイティングな出会いについて語ってもらいました。

フレッドペリーとチャーリー・ケイスリー・ヘイフォードのコラボレーションほど完璧なものはないように見えますね。特に、どちらも過去と現在のサブカルチャーに強い関心を持っている点で。

うん、とても自然な感じがしたよ。僕は常にイギリスのサブカルチャーに目を向けているんだ。父がサブカルチャーのほとんどを経験しながら生きていたから、いつも親子でサブカルチャーについて話していたし、それが僕たちのデザインに強く影響していた。フレッドペリーは様々なサブカルチャーの中で存在感を示しているし、中にはフレッドペリー自体が不可欠な一部となっているサブカルチャーもあると思う。そういった点でフレッドペリーとはファッションブランド以上のもので、その凄さが僕の心にとても響いたよ。

フレッドペリーの服を着たことはありますよね?

うん、ポロシャツは間違いなく着ていたね。19歳か20歳の時にドーバー・ストリート・マーケットで働いたのが人生で初めての仕事なんだけど、その頃ジュディ・ブレイム(伝説のスタイリスト&ジュエリーデザイナー)がフレッドペリーとコラボレーションをしていたんだ。ジュディがジュエリーでカスタマイズした洒落たポロシャツを、僕もなんとか頑張って手に入れたよ。あの頃からフレッドペリーというブランドに対する認識が変わり、フレッドペリーとは何かを理解する上で全く別のダイナミックな要素が加わったから、そういう意味で自分にとって興味深い時期だった。

このコレクションに向けてまず参考にしたものやインスピレーションの源となったものを教えてもらえますか?

ひとつひとつの作品によって構成される全体的な世界観を把握するのが好きだから、僕の場合はムードボードを作成することが欠かせないんだ。今回は、まずドイツの写真家、アウグスト・ザンダーの作品を見ることから始めたよ。文化を捉えたドキュメンタリー写真という発想に興味があって、彼がその発案者の一人のようにみえたからなんだ。それから、80年代のリバプールで撮影されたロブ・ブレムナーの写真も見た。真面目すぎず、ただ現実に実在する人々を捉えただけの作品なんだけれど、そこから感じられるエネルギーに惹かれたよ。あと、最近の写真家の作品も。例えば、オリビア・ローズの「This is Grime」と呼ばれる写真シリーズなんかも見た。彼女は、このフレッドペリーとのコラボキャンペーンの撮影も手掛けてくれたんだ。ムードボードに貼られた写真はどれも僕にとってはとてもオーセンティック、つまりオリジナリティが感じられた。ファッションの世界では自意識が強くなることが多いけれど、カルチャーを促す核となる要素を取り除いてしまうという意味で、過剰な自意識はとても有害なものになることもあると思うんだ。だから、ムードボードの写真が放つ信憑性こそが、僕が達成しようとしていたものの核心だった。

オリビアが撮影したキャンペーンに登場する男性たちのキャスティングに、あなたも深く関わったそうですが。

うん、そうなんだ。キャンペーン撮影では、さまざまな年齢層のちょっとしたストーリーを持った男性たちを撮りたくて、当初はすべてストリート・キャスティングで集める予定だったのが、(新型コロナウィルスの)ロックダウンとタイミングの関係で中止になってしまった。そこで、インスタグラムや実生活で見つけた人々や、面白い経歴を持ったモデルなんかを混ぜたキャスティングに変更したんだよ。でも、その中の若い兄弟3人は、実はオリビアがストリートキャスティングで見つけてきた人たちで、僕が一番気に入っているショットかも。彼らは最初に作成したムードボードが放つフィーリングを彷彿とさせるんだ。

今回のコラボレーションの中核コンセプトについて説明してくれますか?

失ったものが見つかる「ロスト・アンド・ファウンド」というアイデアと、世代を超えて衣服を受け継ぐというストーリーに惹かれたんだ。それから、日本人が「侘び寂び」と呼ぶ、不完全なものや少し使い古されたものに美しさを見出す意識にも興味があった。だから、ボタンが全部違うシャツなんかもコレクションに加えたんだ。「何度もボタンを付け替えて何世代にも渡って受け継がれてきたシャツ」というストーリーを伝えたくてね。

素敵なディテールですね。

思い出、そして思い出が染みついた服というアイデアなんだ。世代を超えて受け継がれ、単なる商品としての服ではなく、その服が自分より前の世代にとって何を意味するのかってことを伝えたかった。着る人によって衣服が変化していくエネルギーのような力にとても惹かれるんだ。あと、日本には「ボロ」と呼ばれるキルトあるけれど、これはいらなくなった生地の切れ端を縫い合わせて、世代から世代へと使われていくものなんだ。だから、生まれたばかりの赤ちゃんに生地の切れ端を縫い合わせたキルトの掛け布団とかけると、赤ちゃんが前の世代の記憶に包まれるっていう見方ができる。そういった衣服の変換、服そのものよりも少し深い意味を持つ何かといったアイデアを大まかな基礎にして、コレクションをつくりあげたんだ。

あなたはテーラリングの専門家として知られていますが、今回のコラボレーションでは素敵なニットウェアも発表していますね。

実は今回、父のアーカイブを掘り下げてみたら、その中に昔のジョー・ケイスリー・ヘイフォードらしいデザインをベースにしたニットあったので、それにフレッドペリーのレンズを通したアレンジを加えてみたんだ。他のニットについては、フレッドペリーのアーカイブに保存されていた数十年前のアイテムをアップデートしてコレクションに加えたんだ。だから、ここでも古いものから新しいものを作るというストーリーを継続したと言えるよね。

ファッションに対して消費者がこれまでのようなスピード感を求めず、より倫理的なアプローチがますます注目されるようになった今、世代を超えて衣服を受け継ぐという発想は、とても時代にマッチしているように感じられます。

それこそまさに僕がしっかりと伝えたかったことで、このコラボレーションの根幹でもあるんだ。僕たちのメッセージが伝わることで、みんなが自分の衣服に付加価値を付けて長く大切にしてくれたらいいなと思ってるよ。

このコラボレーションの結果に満足してますか?

最高の気分さ! ロックダウンが起こると知る前に、これらのアイデアを形にすることができて良かった。自分の信念体系、そしてデザイナーとしてどう前進していきたいのかという点に対してとても誠実で信頼できる結果となったと感じているよ。