サムシング・オブ・ザ・ナイト

2020年1月

Something of
the night

サムシング・オブ・ザ・ナイト

Words by Paul Gorman

黒を使ったストリートスタイルから放たれる、アンチ・エスタブリッシュメントのアティテュード。

色の選択において、黒は否定、反物質、反抗的な思考を象徴する。闇を感じさせることから、昔から反逆者、色んな意味でのアウトサイダーが好む色でもあった。

黒はかつて、美術学生やビートニク、セーヌ川左岸の実存主義者たちだけが身に付ける色だった。モヘアのスロッピージョー(ゆったりとしたセーター)にフィッシュネットタイツ、タートルネックとベレー帽にスリムパンツまたはペダルプッシャー。全身ブラックで固めていた。

そのスタイルは後に、時代のアイコンを通じてポピュラーカルチャーに浸透していった。『ティファニーで朝食を』のリトル・ブラック・ドレスをまとったオードリー・ヘプバーンや、ハンブルク時代のザ・ビートルズがこの時代のアイコンだ。ザ・ビートルズはこのころ、アストリット・キルヒヘアのスタイリングで、レザーとアネーロ&ダビデのサイドゴアブーツで装っていた。さらにはザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リードやジョン・ケイルをはじめとする、60年代半ばを舞台としたアンディ・ウォーホルのスタジオ「ファクトリー」の連中。ここでは、本気のクールさをライダースジャケットと真っ黒なラップアラウンド型サングラスで覆うのがお決まりだった。

それでも、ゴスファッションが1980年代を定義するスタイルの一つとなるまで、シンプルなブラックのシャツは容易に見つかるものではなかった。Flipのようなショップで扱っていたものでも、もともと黒いシャツではなく、強烈な染色を施されたものだった。アントニー・プライスというデザイナーは、メンズウェアに関してはロキシー・ミュージックとそのリーダー、ブライアン・フェリーの衣装プロデュースで知られている。その彼が70年代初めにヒットさせたのが、ポルトガルのメーカー、Plazaとコラボした黒のキャップスリーブTシャツだ(フェリーは自身2枚目のソロLP『愚かなり、我が恋』のジャケットで、このTシャツでエフォートレスな色男ぶりを発揮)。

Twin Tipped Fred Perry Shirt・The Original Twin Tipped Fred Perry Shirt

これとは別に、モッズ(モデット)、スキンヘッズ、スウェードヘッド、ペリーボーイズ、カジュアルズと何世代にもわたって、サブカルチャーの流れに黒のシャツをガツンと注入したのは、他でもないフレッドペリーだ。クラシックな白のテニスシャツに代えて「ブラック/シャンパン/シャンパン」のスタイルを生み出したのは、衝撃的で究極の反体制的な展開だった。

アーカイブをくまなく探してさまざまな時代の色見本を見てみると、「ブラック/シャンパン/シャンパン」は1950年代に登場した、最初のカラーシャツとして認められている。もっとお馴染みの「ブラック×イエロー×イエロー」は70年代になってからの登場だ。

いつの時代も、黒をまとうことは、その他大勢との違いを主張するということになる。ビジュアルの表現として黒を取り入れることは、ステートメントを表現する方法であり続けてきた。

ブラックは、不良や敵役を象徴するモチーフの最たるものでもある。セルジオ・レオーネの傑作『荒野の用心棒』でリー・ヴァン・クリーフが着ていた、容赦なく照りつける太陽の光を吸い込む漆黒の出で立ちを思い浮かべてほしい。あるいは『乱暴者(あばれもの)』のマーロン・ブランド。レザージャケットに身を包み、「ジョニー、一体何に反抗しているの?」と訊かれて、「何だと思う(Whaddya got)?」と辛らつに言い放ったシーンもね。

「黒は虚飾に対する非難、ニヒリズム、退屈、空虚の表現なのさ」。パンクの元祖でセックス・ピストルズのマネージャーであり、「デイム」の称号を持つヴィヴィアン・ウエストウッドのデザインパートナーでもあった文化的偶像破壊者、故マルコム・マクラーレンからこう言われたことがある。だからこそ彼は、黒を希望なき若者たちのムーブメント、その装いのメインカラーとした。1976年に発表されたボンデージスーツはブラックのコットンサテン製。イギリスの老舗靴メーカー、ジョージコックス(George Cox)のブラックスエードのラバーソール(Brothel Creepers)やジョッパーブーツと合わせたときのインパクトは強烈だった。

フレッドペリーのブラックシャツがこれだけ長く愛されていることは、スポーツとカジュアルウェアのあるべき姿がひっくり返った証しだ。白がテニスやウィンブルドン、そしてフレッド自身の象徴だとすれば、黒は正反対の世界観を備えたアンチヒーローの色。フレッドぺリーというブランドの原点とは正反対と言ってもいい、夜遊びと暗くて薄汚いクラブ、まさにサブカルチャーが育つ空間を象徴する色だ。フレッドペリーのブラックシャツは、ポロシャツ姿でLAをぶらつく奴らが着ているパステルカラーのプレッピースタイルに2本の指を突き立てている。

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