ヘヴンリー・レコーディングスの30年

サブカルチャー

Believe in Magic…
30 Years of
Heavenly Recordings

ヘヴンリー・レコーディングスの30年

2020年 11月
Photos by Paul Kelly

設立30周年を迎えるヘヴンリー・レコーディングスが今回新たに出版する『Believe in Magic』は、英国で最も称賛されるこのインディーズレーベルを隅々まで明確に描き出しています。

英国のアシッド・ハウスのムーブメントのさなかにジェフ・バレットによって立ち上げられたヘヴンリー・レコーディングスの初期のリリースは、その時代を象徴するものでした。そのリストには、フラワード・アップ、セイント・エティエンヌ、そして偉大な故アンドリュー・ウェザオールの名が連なり、ヘヴンリーの90年代は、来る10年に波長を合わせた前向きなアップテンポでスタートしました。

ヘヴンリー・レコーディングスのロビン・ターナー自身が執筆、編集した本書は、レーベルの写真、グラフィックを担当している古くからの友人ポール・ケリーによって丁寧にデザインされています。収録された30のエピソードには、レーベルの最初の30年を飾る画期的なレコードや出来事、人物たちが描かれていて、秘話やインタビューが、貴重なバックステージの写真、アルバムカバーのアートワーク、ロンドンオフィスで見つかった落書きの紙などと共に挿入されています。

『Believe in Magic』は、1990年の夏にヘヴンリー・レコーディングスを最初に紹介した音楽ジャーナリスト、ジョン・サヴェージの前書きから始まります。「ボブ(スタンリー)は僕に、マウントプレザントにある巨大な郵便局の近くに建つPanther Houseに事務所を構えるジェフ・バレットという名の人物のところに行けと言った。こうして、僕はプレスエージェンシー「Capersville」を訪ねた。すると、変わり者の子どもみたいな連中であふれたオフィスを温和に統率している、赤毛の長髪の男に挨拶をされた。僕は、「ああそうか。これが未来なんだ。面白そうだな」と思った」

本書を読むと、このレーベルを長寿たらしめているものは、その楽し気な雰囲気と独自の思考であることが分かります。英国におけるバレアレスビートの全盛期、ヘヴンリーは多くのウェールズのパンクバンドと契約を締結。他のレーベルが売り上げを最優先にしているときに、ジェフとロビンは、ケミカル・ブラザーズが一躍有名になるきっかけとなった、今では伝説的な存在のライブハウスHeavenly Socialをオープンしました。

ヘヴンリーは現在独自に200曲をリリースしていますが、『Believe in Magic』では、アンドリュー・ウェザオールとの最初のリリースから、直近ではマンチェスター出身の新鋭ワーキング・メンズ・クラブまで、所々に有名どころから無名のグループについての逸話や、パブのはしご、無様なヘアカット、ワイルドなパーティーなどのストーリーを交えながら、年代順に語られています。

Frith Streetの事務所にいるロビン・ターナー。写真:ポール・ケリー(1996)

「この本に一貫したテーマがあるとしたら、音楽に関する人との会話から全てが生まれているということ」と、ジェフは説明しています。「カウンターの反対側で自分にものを売る人や、どんなバンドを聞かなくてはいけないなんてことを熱心に書いている人からきっかけが生まれると思いがちだけれど、僕は物事は一方通行で動くものではないと思っている。それはもっと進行中の会話みたいなもので、止まることがない。僕たちの生活のなかで成長するサウンドトラックを作り上げる助けになるようなものであり、人から人へ受け継がれていくものなんだ。それはまさに、常に存在する糸だ。だからこそ、僕たちは魔法を未だに信じている」

マニック・ストリート・プリーチャーズ、ベス・オートン、ドン・レッツ、コンフィデンス・マン、キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードをはじめとする多くの人々の助力で、この本には、ヘヴンリーが人々に愛される理由、家族の崩壊、すべての人々を受け入れるクラブの姿が描かれています。

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