オール・アワ・トゥモローズ:Day2 ハク・ベイカー

オール・アワ・トゥモローズ

Day Two -
Hak Baker

Day2 - ハク・ベイカー

Words by G.G
Photography by Sharon Lopez and Chazz Adnitt

ユースカルチャーの中心として活躍するゲストをピックアップした、金曜夜の「オール・アワ・トゥモローズ:All Our Tomorrows」。出演パフォーマーの大半がインターネット文化の申し子といえる顔ぶれで、ジャンルやスタイル、それぞれが基準とするものが、多様な影響の坩堝のなかで互いに混じり合っている、ということからもそれは明らかだ。2019年に生きる者として、葛藤と混乱の時代に立ち向かうのにこれ以上ふさわしい方法があるだろうか?

歴史ある100クラブのステージを最初に飾るのは、ラッパーのナヤナ・アイズ(Nayana IZ)。ウエストロンドンの集団「NiNE8」のメンバーでもある彼女は、自身のソロキャリアをスタートさせてから間もないものの、機関銃のように立て続けに繰り出される、目も眩むように圧倒的なフローのヴァースでステージを完全に支配する。そのパフォーマンスには周囲を巻き込む意思の強さが表れているが、時として可憐なボーカルのパッセージによるブレイクも挟む。この2つの要素が見事に結び付いた曲が、印象的なフックでオーディエンスを虜にする「Pusha」。セット終盤では「ロンドンのみんな、手をあげて(people in London get your hands up)」と、オールドスクールなスタイルも操り、オープニングアクトとして高水準のパフォーマンスを見せた。

 

続いて、沸騰寸前に盛り上がった会場にマスターピースが登場し、場を否応なしに沸き立たせる。とてつもなくキャッチーなラップ、R&Bにパンクとサーフロック愛も注入されたそのたたずまいは極めて個性的だが、同時に普遍的なポピュラリティも持ち合わせている。その証拠に、「Goosebumps」「FaceTime」「Big Trouble」といった曲ではオーディエンスが慣れてしまうのに1コーラスしか必要なく、2コーラス目では力強いレスポンスが返ってくるようになる。マスターピースの最高なキャラクターも相まって、会場は一段と盛り上がっていく。彼の声は鼻にかかったはっきりとわかるロンドン風で、それは彼の楽曲に10倍の説得力を持たせる。例えば、「No Brainer」における、危険な誘惑への抵抗を扱う時のように。

マンチェスター出身のBadgirl$は、100クラブの壁に今も残るパンクのスピリットにふさわしい、予測不能なセットを展開。トラップのビート、ドライブするベース、パンク、それにエモの黄金時代を想起させるギター少々と、このトリオのサウンドはいわば引用の宝庫だ。彼らのヴィジョンが美しく調和した「Click」は、ギタリストのバブズが奏でる螺旋状のリフに乗せ、ビリーとクックスの二人がメランコリックなボーカルを交互に取り合う1曲。ラップトップとマイクスタンドの間をメンバーが行き交い、セットリストが変化していくライブ全体に、インプロヴィゼーションとしか言いようがない感覚が通底している。「いや、ちょっと待って、これで行きたいんだけど」と、次の強烈なインストゥルメンタルを用意するビリーが言う。生命を持ち呼吸するような、彼らのセットは今後も要注目だ。

今夜のヘッドライナー、ハク・ベイカーは熱狂的な歓迎のなか、肩からアコースティックギターを下げ、Badgirl$のライブの残骸をまたいで登場。自身が「Gフォーク」と呼ぶ、ダブ風のうねるベースラインとリムショットを基調とするライブセッティングによる、余分な要素を排除したアコースティックギターと親しみあるボーカルを披露した。さまざまにスタイルを変えながらシーンで長いキャリアを積んできたベイカー。2017年以降にリリースした音源は多くのコアなフォロワーを魅了している。今夜はそのフォロワーたちが熱烈かつ忠実なシンガロングでその存在を主張。「イーストロンドンで育って…(Growing up in East London…)」というコーラスを持つ「Conundrum」では、気ままな少年時代のほろ苦い描写と、ロンドンのタフなエリアが直面する困難がヴァースの行間に描かれていく。

その後、「Like It or Lump It」では、ダンサブルなグルーヴとインストゥルメンタルを提供。「もう一回!」とベイカーがシャウトすると、この曲の最後のメロディーがそのまま長いジャムへと変貌していき、場内の興奮を煽る。サークルピットが膨れ上がり、ステージに押し寄せたオーディエンスはサビを繰り返し合唱する、まさに祝祭のシーンが展開された。パンク全盛期、この100クラブが同じような阿鼻叫喚の盛り上がりを見せていただろうことは、想像に難くない。

フロア中に空のビールカップが山積みになるなか、エメラルド(Emerald)がデッキの後ろで仕事を開始し、ハウス、ファンク、ガレージを織り交ぜた完全無欠な音のタペストリーで、この夜を終演まで見届けた。そのビートは、将来有望な新しい才能が輝き、「未来」は有望であることが確約された、そんな一夜の締めくくりとなった。